中東かわら版

№169 イスラエル:トランプ政権の入植地批判

 2月2日、ホワイトハウスのスパイサー大統領報道官は、イスラエルの入植地は和平の障害だとは考えないが、新規の入植地建設や現在の境界線を越えた入植地の拡大は和平のための助けにならないかもしれない(may not be helpful)と述べた。トランプ政権が親イスラエル的な立場を取ると期待したネタニヤフ政権は、トランプ大統領が就任した1月20日頃から、総計で5000軒を超える入植地内の住宅建設を連続的に発表していた。2月2日には、ネタニヤフ首相が、25年ぶりに新規の入植地を建設するための委員会を設置すると発表したばかりだった。スパイサー大統領報道官の発言のトーンは、オバマ政権時代ほど厳しくはないが、それでも入植地建設に反対してきた歴代の米国政権の伝統的な言い回しに戻った。また2日のイスラエルの『エルサレム・ポスト』紙は、ホワイトハウス筋の話として、イスラエルに対して入植地内の住宅を5000軒建設するなど一方的な行動の発表を控えるよう求め、トランプ大統領は中東和平問題の2国家創設による解決法の最良の方法を模索していると述べたと報道した。

 トランプ大統領は、親イスラエル的な立場を表明しており、また次期イスラエル大使が入植地活動を支持することを公然と主張していたことから、トランプ政権はイスラエルの入植地活動に甘い対応するのではないかと予想されていた。トランプ大統領就任後、ネタニヤフ政権が矢継ぎ早に入植地内住宅建設計画を発表しても、米国政府は沈黙していたことがその証左と見られていた。それだけに、スパイサー大統領報道官の発言の変化が注目される。

 報道官発言と直接関係するか不明であるが、トランプ大統領は、2日の朝、ワシントンを訪問していたヨルダンのアブドッラー2世国王と非公式に会談している。アブドッラー2世国王は、1月末からワシントンに滞在しており、1月30日にペンス副大統領、マティス国防長官、2月1日には国会議員らと会談している。また2日には、ティラーソン国務長官がネタニヤフ首相に電話をしているが、会談内容は明らかにされていない。

評価

 2日のスパイサー大統領報道官の発言は、トランプ政権がイスラエルの入植活動について、オバマ政権ほどきつくはないが、それでもイスラエルが期待したほど甘くはない可能性を示唆している。トランプ大統領は2月15日にネタニヤフ首相と会談する予定である。それまでは、余計な動きはして欲しくないとの米国の意向の表明かもしれないが、イスラエルと米国のメディアは、トランプ大統領が予想外の穏健な反応を見せたと感じているようだ。

 中東和平問題について、トランプ大統領は、義理の息子であるクシュナー上級顧問にまかせる意向を表明しているが、同顧問が具体的に何をしているかはまだ公表されていない。トランプ大統領が発表した移民や難民規制に関する大統領令では、側近であるホワイトハウスのバノン上席戦略官とフリン国家安全保障担当補佐官が中心的にかかわったと報道されているが、トランプ政権の中で、大使館移転問題や入植地問題など対イスラエル政策や中東和平政策について誰が関与しているかについてはまだはっきりしない。しかし、それが誰であれ、今のところ、その対応は比較的穏健であり、米国の伝統的な政策の枠内におさまっているのは確かだろう。

 

(中島主席研究員)

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