中東かわら版

№167 モロッコ:モロッコがアフリカ連合に再加盟

 1月30日、エチオピアのアジスアベバで開催された第28回アフリカ連合(AU)首脳会合で、モロッコのAUへの再加盟申請が加盟国の賛成多数で承認された。賛成したのは、全加盟国54カ国のうち39カ国だった。モロッコは2016年7月に再加盟の意思を表明し、9月に公式に加盟申請を行っていた。

 AUの前身・アフリカ統一機構(OAU)は1982年、西サハラ地域の独立を目指す「サハラ・アラブ民主共和国」(SADR、ポリサリオ戦線が母体)を主権国家と認め、OAU加盟を承認したため、モロッコはこれに抗議して1984年に同組織を脱退していた。したがって、33年ぶりの再加盟となる。AU加盟国にはSADRを承認している国と承認していない国があり、前者にはアルジェリアや南アフリカなどがいる。しかしモロッコの加盟承認を受け、SADRを承認している国々(つまりモロッコの領土的主張と対立する国々)を含め、AU諸国がモロッコを歓迎した。ただし、イブラーヒーム・ガーリー・ポリサリオ戦線議長/SADR大統領は、モロッコが加盟した以上、西サハラ住民の民族自決に向けて、延期され続けている国連西サハラ住民投票ミッション(MINURSO)による住民投票を実施すべきだと述べている。

 加盟承認後、ムハンマド6世国王は演説を行い、モロッコが「家」(AU)に帰ってきたことを嬉しく思うと述べた。また、西側による開発モデルの受け入れを当然と考えずアフリカ自身の資源・文化的遺産・価値にもとづく発展を目指すべきであること、モロッコはアフリカ市民の発展と繁栄に関与することを強調した。

 

評価

 モロッコはこれまでAUがSADRを承認している限り、AUに復帰しないとの立場を取っていた。この立場を変えてAUへの復帰を選択した理由は、西サハラはモロッコの不可分な領土であるという同国の主張に国際的な支持を集めるために、AUへの加盟が必要と判断したためであろう。

 AUには54もの国(SADRを除くと53)が加盟しており、アフリカ諸国と良好な関係を築くことで国連などの外交の場でモロッコの発言力が大きくなるとみられる。西サハラの地位問題は国連の仲介で解決されることになっているため、モロッコにとって国連は特に重要な場である。しかし、潘基文国連事務総長が西サハラに関して「占領」と表現したり(2016年6月)、EU司法裁判所が西サハラ地域をモロッコ領土と見なさないという判決を下したりと(2016年12月)、モロッコの領土的主張と対立する動きは存在している。そこで、モロッコと歴史的な繋がりの深いアフリカを、西サハラ問題をめぐるモロッコ外交の新たな足場にしようと考えたと思われる。その証しは、ムハンマド6世国王による近年の積極的なアフリカ外交に見られる。多くのアフリカ諸国を自ら訪問し、複数の経済協力の合意を取り付けながら関係強化を図ってきた。2016年秋にも東アフリカ諸国を歴訪し、親SADR派とされるナイジェリアとも天然ガスのパイプラインの建設で合意した。モロッコのGDPはアフリカ大陸で第6位の規模であり(2015年、世界銀行)、アフリカ諸国にとってもモロッコとの経済協力は望ましい。

 しかし、モロッコの加盟によって、AUが西サハラ問題をめぐる国家間対立の場となる可能性は高い。ポリサリオ戦線の闘争を支持し、SADR亡命政府を国内に引き受けるアルジェリアは、モロッコが加盟申請をした時から、モロッコがSADRをAUから除名しようとするならばそれは受け入れられないと警告を発している。他のアフリカ諸国も、AUが対立の場となることに懸念を抱いているようだ。モロッコのAU加盟によって、西サハラ問題をめぐる諸外国の関係がどのように変化するか、特にモロッコとアルジェリアの対立が顕著となるのかどうかが注目される。

(金谷研究員)

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