中東かわら版

№163 イスラエル:米国大使館のエルサレム移転をめぐる議論(2)

 1月22日、ヨルダンを訪問したパレスチナ自治政府のアッバース大統領は、アブドッラー2世国王と会談した。報道では、米国大使館がエルサレムに移転された場合の対応策について協議したとされる。同日、米国のトランプ大統領は、ネタニヤフ首相と電話で会談し、ネタニヤフ首相が2月初めに米国を訪問することで合意している。両者は、中東和平問題やイラン核合意を含む地域問題を協議したとされるが、米国大使館移転問題について議論したかは不明である。トランプ大統領は、大統領に就任する前日の19日にイスラエルの新聞『イスラエル・ハヨム』の質問に対して、自分は約束(大使館移転の公約)を忘れる人間ではないとコメントしている。22日、大統領報道官は、大使館移転問題の協議は初期段階にあると述べている。

 一方、トランプ政権成立直後から、ネタニヤフ首相は、入植地内の住宅建設を促進する姿勢を明確にしている。22日、エルサレム市は、東エルサレムの入植地内で計566軒の住宅建設を認可している。報道では、ネタニヤフ首相は、近く、閣議で東エルサレム市内での建設規制を緩和する決定をする予定である。その一方で、ネタニヤフ首相は自分のライバルである極右「ユダヤの家」党のベネット党首が主張していた西岸の大規模入植地のイスラエル併合法案については、国会での採決を先送りしている。入植地併合については、トランプ政権側が事前協議なしで一方的行動を取らないよう要請したためと報道されている。

評価

 トランプ大統領が米国大使館のエルサレム移転については明確な方針を表明していないため、ヨルダンとパレスチナ側は、一段と危機感を強めている。米国における米国大使館のエルサレム移転の議論は、一見、外交政策のようであるが、実態は、選挙を意識した議員らによる内政上の議論である。1995年に議会が大使館のエルサレム移転を決議したが、3代の大統領(クリントン、ブッシュ、オバマ)が20年以上にわたり移転を先送りしてきた。これは内政の枠内での大使館移転の議論と実際の外交は別の問題であるとの認識がホワイトハウス側にあったためである。トランプ政権が、内政での議論をそのまま外交政策に導入するのであれば、米国の外交全体に関わる大きな問題にもなるだろう。

 

(中島主席研究員)

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