中東かわら版

№150 イスラエル:西岸の不法入植地をめぐる動き(2)

  12月18日、イスラエル最高裁が12月25日までに撤去するよう命令していた西岸中部の(イスラエル基準での)不法入植地アモナの住民らは、ネタニヤフ首相が提案した妥協案に合意した。同合意案は、ネタニヤフ首相と入植者の支持を受ける政党「ユダヤの家」のベネット党首(教育相)が作成したもので、不法入植地アモナの家族の一部を隣接する入植地オフラに移し、他の一部を隣接する土地(約100メートル)に移転させる内容である。アモナの住民が移転案に同意したことを受けて、20日、イスラエル政府は、最高裁に対して、アモナの住宅撤去期限を45日間延期(2017年2月8日)するよう要請した。21日、最高裁は、不法入植地アモナの住民に対して政府案に合意したと記した書類に署名して、22日午前10時までに裁判所に提出するよう指示した。アモナの住民らは、12月25日の撤去期限が延長されない場合は、政府との合意を拒否し、実力で撤去に抵抗すると主張している。

 他方、アモナの住民の一部の移転先とされた隣接する土地のパレスチナ人地主らは、裁判所に土地接収の中止を求める訴訟を起こすとしている。イスラエル当局は、19日、移転する土地のある村に対して土地の接収を通告している。イスラエルのC10テレビは、住宅やインフラ建設に約3500万ドル、移転する住民への補償金として109万ドルがかかるとした。左派のNGO「ピース・ナウ」は、不法な行為を行っている入植者に、1家族あたり25万9000ドルの補償金を支払うことを批判している。

 不法入植地アモナ撤去にあわせて「ユダヤの家」党が国会に提出していた、西岸の不法入植地の一部を合法化する法案は、国会での審議が行なわれていたが、12月8日、ネタニヤフ首相と「ユダヤの家」のベネット党首が、リバーマン国防相の提案に従い、米国でトランプ大統領が就任した後に成立をめざすことで合意している。

評価

 ネタニヤフ首相は、不法入植地アモナの住民を軍・警察が実力で排除することだけはどうしても回避したかったと報道されている。国会が2017-2018年予算を採決する時期と重なり、各地方自治体に予算削減を求めている最中に、新たに約3500万ドルの移転経費を拠出することを決めたのは、イスラエル人同士の衝突を避けるためだった。最高裁の命令に従い不法入植地アモナの住宅が撤去されるとしても、また同じ場所に次の不法入植地が建設される可能性が高い。また一部住民を隣接する土地に移転させるために、新たにパレスチナ人の土地接収が行なわれる予定である。こうした動きはイスラエル内政の文脈に限れば、一定の法的・政治的意味を持つとしても、国際法上では、すべて不法な入植地に関連する動きになる。

 イスラエル側には、トランプ次期政権が入植活動を容認あるいは批判の声を弱めるかもしれないとの期待がある。トランプ政権が従来の立場を変えて、西岸での入植活動を容認する政策を取る場合、パレスチナ情勢、中東和平問題は、相当混乱することになるだろう。

 

(中島主席研究員)

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