中東かわら版

№143 米国・イスラエル:トランプ次期大統領の新駐イスラエル大使指名めぐる波紋

 12月16日、トランプ次期大統領は、新駐イスラエル大使として自身の弁護士であるデビッド・フリードマンを指名した。フリードマンは、トランプ次期大統領のイスラエル問題顧問として、メディアなどでイスラエルの極右に近い立場を表明していた。そのためリベラルな親イスラエル団体である「J-Street」は、同人事を強く非難し、撤回を求める声明を出している。また『NYT』紙は社説(16日)「A Dangerous Choice for Ambassador to Israel」でフリードマンが次期駐イスラエル大使になることを批判した。イスラエル側では、ネタニヤフ首相を含む右派及び極右の政治家たちが、同人事を歓迎したと報道されている。

 フリードマンは、正統派のユダヤ人で、イスラエルの入植地活動を支援しており、米国歴代政権が進めた中東和平問題の2国家解決方式にも反対している。同人には、外交面の経験はない。イスラエルの『ハアレツ』紙は、フリードマンはイスラエルの基準でも極右に分類されるとした。大使の任命には、上院の承認が必要とされる。今回の人事に反対する勢力は、同人は在米ユダヤ人の意見を代表していないとして、上院に同人の大使任命を拒否するよう求める姿勢を強めている。

評価

 これまでもトランプ次期大統領の閣僚人事が取り沙汰されてきたが、イスラエルの極右に近い立場の人物が次期駐イスラエル大使に指名されたことに、米国のリベラル派のユダヤ人及び団体が強い反発・拒否感を表明している。フリードマンはトランプ次期大統領と個人的に近い立場にあるとしても、今回の人事がトランプ政権の対イスラエル政策を反映したものかどうかははっきりしないようだ。米国のユダヤ系メディアの中には、今回の人事に反対しつつ、対中東政策立案では、国務長官と国防長官の影響力が大きく、駐イスラエル大使は政策立案には関与しないとする見方を表明しているものもある。

 在米ユダヤ人社会の中で、ユダヤ教の穏健派と改革派はイスラエルのパレスチナ占領に批判を強める一方、ユダヤ教正統派が無批判にイスラエルを支持する傾向が強まっていると言われている。報道されているフリードマン氏の発言を見る限り、同人は、こうした傾向の典型例かもしれない。

(中島主席研究員)

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