中東かわら版

№116 イエメン:フーシー派がマッカにミサイル攻撃?

 2016年10月28日、サウジが率いる連合軍は27日にイエメンのフーシー派が同国北部のサアダ県からマッカ州に発射した弾道ミサイルを迎撃・破壊したと発表した。サウジ資本の影響が強い報道機関はフーシー派がマッカそのものを攻撃したと解すことができる見出しで報じている。一方、イエメン外務省(フーシー派)は、イエメン軍が保有する「ブルカーン-1」ミサイルをジッダの国際空港(これもマッカ州)に対し発射したと発表、マッカへの攻撃であるとのサウジ側の発表を自らの戦争犯罪を隠蔽するための広報キャンペーンであると論評した。

評価

 2015年3月に連合軍が軍事介入しイエメンでの紛争が激化して以来、フーシー派・サーリフ元大統領派はしばしばサウジに対し弾道ミサイルを発射してきた。今回話題になっている「ブルカーン-1」はスカッドCまたはD型ミサイルを改良して射程距離を800km程度に延伸したものとされている。これまでにも、ターイフ付近の軍事基地に対し同型ミサイルを発射したとされる例がある。もっとも、サウジ側ではイエメン側が発射したミサイルの迎撃に成功したと発表しており、これまでのミサイル攻撃ではさしたる戦果は上がっていない。イエメン紛争での対サウジ攻撃としては、イエメンのサアダ県と隣接するジャウフ、ジャーザーンなどの地域へのロケット弾・迫撃弾攻撃や、国境警備隊などへの襲撃のほうがより頻繁に行われ、これによる死者数は数十人規模になっている。

 イエメン紛争では、今般のミサイル攻撃に加えバーブ・マンダブ海峡付近でのアメリカ軍艦船への対艦ミサイルによる攻撃事件など、攻撃が成功した場合の政治的反響が非常に大きい攻撃が続いている。これは、解決のための協議が頓挫すると共に、連合軍の介入から1年半以上を経てもフーシー派の打倒も同派による対サウジ攻撃能力の破壊も実現しない中で、紛争当事者の行き詰まり感が高まっていることを反映しているように思われる。その一方で、万が一マッカにミサイルが着弾したり、アメリカ軍の艦艇に損害を与えたりした場合、紛争におけるフーシー派の立場は著しく悪化することは容易に予想できることから、結果を真剣に考えて攻撃を行っているかについては疑問も残る。ハーディー前大統領派や連合軍がフーシー派を早期に打倒したり、同派の攻撃力を壊滅させたりする見通しが立たないことから、当面は攻撃側さえも予期せぬ形で攻撃が「成功」してしまった場合の展開を懸念すべきであろう。

(髙岡上席研究員)

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