中東かわら版

№110 リビア:トリポリでグワイル首相ら国民議会派がクーデタ

 10月14日夜、トリポリの国家評議会の建物をハリーファ・グワイル首相ら国民議会(GNC)派が占拠し、GNCが「リビアを救う歴史的イニシアティブ」を遂行したこと、及び非常事態を宣言した。また、リビアの統一政府「国民合意政府」(GNA)は外国勢力の傀儡であり、GNA執行評議会のメンバーを全員解任すると述べ、東部政府のシンニー首相に向けて統一政府の結成を呼びかけた。GNAに対するクーデタと見られる。

 GNCは2014年に任期を終えた暫定立法府で、ハリーファ・グワイルが首相を務めていた。グワイル首相やGNCの一部は、その後に選挙を経て成立した立法府・代表議会(HoR)の正統性を認めず、任期切れのままトリポリで立法府及び政府の活動を続け、HoR(在トブルク)及びシンニー政府(在ベイダ)の東部勢力と軍事的対立を深めた。2016年4月に国連の仲介によって統一政府のGNAがトリポリで成立すると、GNCはGNAを承認し、GNCもグワイル首相も政治の表舞台から姿を消した。しかし今回、突然、GNCがクーデタという形で再び姿を現した。なお、グワイル首相らが占拠した国家評議会はGNAの最高諮問機関である。

 今回のクーデタについて、グワイル首相は9月中にシンニー首相に計画を知らせていたという報道がある。クーデタ後、グワイル首相はシンニー首相と連絡を取り合っていると述べており、東部と西部の両政府が全土停戦合意に至る可能性さえ示唆した。他方、東部のシンニー首相はグワイル首相に対し、HoRがリビアの正統な立法府であることを認めなければならないと返答し、東西統一政府の結成案を却下した。国連や欧米諸国は今回のGNCの行動を非難している。

  

評価

 グワイル首相ら国民議会(GNC)派によるクーデタは、国民合意政府(GNA)によるリビア統一を望む国連や欧米諸国からは当然ながら非難され、国内では東部シンニー政府から冷ややかな対応を受けた。完全に支持を表明した団体は、現在のところ、トリポリの有力民兵組織「リビア革命者作戦室」(LROR)ぐらいである。GNCが再びリビアの主要な政治アクターになっていくのかどうか、今後の展開を注視する必要があるだろう。GNCとHoRは互いに対立する関係にあるとはいえ、GNAを「リビアの諸勢力を代表していない」、「外国勢力によって作り上げられた」政権と見なす点では一致しており、何らかの形で両者が協力する余地はある。

 それ以上にリビア情勢で重要なことは、国連肝いりで形成されたGNAがリビアの主要勢力に受け入れられていないことである。しかもGNAの内閣は8月にHoRによって否決され、現在も再組閣は進んでおらず、法的正統性を失った状態で活動を続けている。つまりGNAは、法的正統性も主要勢力からの政治的支持も持たない名ばかりの統一政府に成り果てている。それにもかかわらず、国連や欧米諸国はGNAへの政治的・軍事的協力を進めている。こうしたGNAの正統性と統治能力の無さが、国内の様々な政治・軍事勢力のめまぐるしい合従連衡や対立を生み出し、統一プロセスを困難にしている。今回のクーデタも、このような文脈で起きた出来事と理解できるだろう。

(金谷研究員)

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