中東かわら版

№98 トルコ:非常事態宣言延長へ

9月29日、エルドアン大統領は、7月15日未明に発生したクーデタ未遂事件後、トルコ全土に発令した非常事態宣言を延長するとの方針を示した。

 前日の28日、エルドアン大統領を議長として6時間にわたって行われた国家安全保障会議(MGK)では、国民の安全および国内の秩序確保についての話し合いがなされた。特に、7月のクーデタ首謀者とされるギュレン派への対応、軍事作戦を展開する「イスラーム国」への対応、クルド問題等、現在進めらているトルコの作戦について議論が行われた。MGKは、会議終了後、非常事態宣言の延長を政府に勧告した。

  

評価

 非常事態宣言は3カ月間という期限を設けて出された。当初、クルトゥルムシュ副首相は非常事態の期間は短期で終了するとの見通しを示していたものの、エルドアン大統領は、必要があれば延長も辞さない構えを見せていた。今回、エルドアン大統領は非常事態宣言の延長はトルコの国益にかなうと主張し、「12カ月でも十分ではないかもしれない」と発言している。非常事態の宣言後は、トルコ共和国憲法に則り、閣議を経れば、国会にあたる大国民議会の審議を省略できる(議会の承認は必要)ことから、反政府とみなした人々を多数解任(または停職)するという事態が生じている。また、ギュレン系とされる企業、団体、メディア等の解散や接収が行われていることから、国内のみならず国際社会からも人権弾圧だとして批判を浴びている。

 ただ、クーデタで自身の命をも狙われたエルドアン大統領は、今回の事件を機にギュレン派を一掃し、反エルドアン分子を駆逐させることに躍起になっており、しばらくの間は手を緩めることはないだろう。

 トルコでは、2015年頃からPKKや「イスラーム国」によるものとみられる「テロ行為」が相次いで発生している上、クーデタ以降の非常事態宣言によって、主要産業の観光に大打撃を与えている。政治が不安定のまま推移すれば外国からの投資が減少し、トルコ経済のさらなる悪化は免れないだろう。

(研究員 金子 真夕)

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