中東かわら版

№97 OPEC:原油生産量を日量3250-3300万バレルに制限することで合意

 9月28日、OPECは、加盟国全体の原油生産量を日量3250-3300万バレルに制限することで合意した。8月の生産量は3324万バレルを記録していることから、事実上の減産となる。OPECで減産措置がとられるのは約8年ぶり。OPECの合意を受けて、原油価格(ブレント)は2.84ドル上昇し、48.85ドルとなった。

  

評価

 OPEC全体で生産枠を設けることについては、これまでサウジアラビアが積極的に主張してきたものの、イランが反対していた。核合意による制裁解除後、制裁前の原油生産量の水準に戻すことを目指していたイランにとって、OPEC全体の生産枠は自国の増産政策の障害となる恐れがあると見ていたためである。しかし、イランの8月の原油生産量は365万バレルに達し、制裁前の水準にほぼ戻りつつある。こうしたことから、イランも合意を示すことが容易になったのであろう。一部では、年初来のサウジとイランの政治的対立がOPECの意思決定を阻害しているという見方もあったが、今回の会合においてもサウジ・イラン間で交渉が持たれていたように、政治的対立が必ずしも経済紛争に影響を与えているとは限らず、それぞれ別の背景の下に争われている点には留意すべきだろう。

 他方、今回の合意では各国別の生産割当については議論されず、11月末の総会に先送りにされた。各国別の生産割当が決まらない場合、それぞれの責任が不明確になるため、OPEC全体の生産枠が守られる可能性は低くなるだろう。

 また、OPECの原油生産量は、2014年が3101万バレル、2015年が3210万バレル、2016年第1四半期が3250万バレル、第2四半期3276万バレルと、原油価格が下落して以降も一貫して上昇を続けてきていた。3250-3300万バレルという水準は直近の数字から見ると減産となるが、2015年以前の生産量から見ると依然として高水準であり、2011年12月以降2015年12月まで設定されていた3000万バレルという生産目標から見ても250-300万バレル高い水準となっている。こうした高めの生産目標が守られるか否かについては、かつて生産調整役であったサウジアラビアがどれだけ減産に転じるかどうかに懸かっていると言えよう。

  

(研究員 村上 拓哉)

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