中東かわら版

№87 「イスラーム国」の生態:サッカーのルールを「シャリーア化」

 2016年8月31日、シリアの反体制派寄りの広報機関である「シリア人権監視団」は、「イスラーム国」がダイル・ザウル県でのサッカーの試合についてFIFAが定めたルールではなく「シャリーア的な」ルールで行わせたと発表した。発表によると「イスラーム国」が占拠した地域の住民の日常生活を監視する「ヒスバ」の要員がダイル・ザウル県マヤーディーン市やその周辺地域の住民が開催予定のアマチュアのリーグ戦の実施に干渉し、選手らに対し「アッラーの啓示と預言者のスンナ」に背くルールに基づく試合をしないよう「助言」した。「イスラーム国」の見解によると、ファウルにより選手が負傷し、原因となった選手に(イエローカードなどの)警告が与えられる場面においては、カードによる警告の代わりにコーランの章句と預言者のスンナに基づき原因となった選手に「同害報復」が科される。

評価

「イスラーム国」が占拠した地域の住民の日常生活に事細かに干渉し、飲酒・喫煙・歌舞音曲の禁止、服装やあごひげについての規制など様々な「イスラーム的」規制を強制していることはかねてから知られていた。今般の事例も、「イスラーム国」が個人の外見や生活態度だけでなく、内面にまで干渉し、支配しようとしている好例といえよう。ただし、「シリア人権監視団」の発表だけではサッカーのルールの「シャリーア化」がコーランやスンナのどのような記述に依拠しているのか、或いはこれに則ってサッカーの競技を正常に運営できるのかについては不明である。

(イスラーム過激派モニター班)

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