中東かわら版

№73 サウジアラビア:「ポケモンGO」を巡る宗教界の反応

 7月にリリースされ全世界で3000万ダウンロードを記録するヒットを見せているスマートフォン向けゲームアプリ「Pokemon GO(ポケモンGO)」に関して、サウジアラビアの宗教界の対応に注目が集まっている。一部報道では、ポケモンGOを禁止するファトワー(宗教令)が出された、あるいは、2001年に出されたポケモンのゲームを禁止するファトワーが更新されたと報じられているが、最高ウラマー委員会は公式Twitter上において、「委員会はポケモンGOに関してファトワーを発出していない」とし、メディアが報道しているものは、公式ホームページのトップページに掲載されている 2001年に発出した過去のファトワーに基づくものであると指摘している。さらに、今回新しく出たポケモンGOに関しては「新たなファトワーが必要である」とし、それは未だに発出されていないということを明らかにしている。

 2001年に発出されたファトワー(第21758号)では、子どもがポケモンのカードゲームに熱中し、時間と金銭を同ゲームに費やす現象が広まっていることを懸念するとともに、①カードゲームを通じてギャンブルが行われていること、②進化論を肯定する内容が含まれていること、③様々な宗教シンボルが含まれていることがイスラームに反していると判断し、同ゲームの販売を禁止するとともに、全てのムスリムに同ゲームをプレイしないよう勧告していた。

 

評価

 サウジアラビアにおけるイスラームの解釈については、偶像崇拝にあたるため雪だるまの制作を禁止するファトワーが出されるなど、欧米諸国や日本の価値観からは奇異に映るものがいくつかあり、メディアにおいて面白おかしく取り上げられることがしばしばあった。今回のポケモンGOを巡る報道に関しても、事実関係が十分に確認されないまま、興味本位に脚色された報道が多く出回ったようである。

 上記にあるように、最高ウラマー委員会の公式の立場では、ポケモンGOに対していずれの判断も下していないことになっている。他方、公式ホームページのトップページに15年前のファトワーが再掲されていることは、同委員会が今回の問題をどのように認識しているかを暗に示している可能性もある。ファトワーは一般信徒の質問に対して回答をするという形式がとられるため、今後、信徒からの質問が多数寄せられれば、改めてポケモンGOに関する新たなファトワーが発出されることになるだろう。

 他方、こうした宗教界の見解が、サウジ国民の反発を招く可能性は低いと見られる。一部の若者は娯楽に対する厳しい制限に不満を表明する可能性もあるが、過去にポケモンが禁止された際にはインターネットを介して違法アップロードされた動画や海賊版を入手していたとされており、国内では大きな問題にならなかったという経緯もある。

(村上研究員)

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