№60 シリア:ハミース内閣組閣
2016年7月4日、アサド大統領は2016年大統領令203号を発出、ムハンマド・ディーブ・ハミースを首班とする内閣を任命した。閣僚名簿は以下の通り。
イマード・ムハンマド・ディーブ・ハミース | 首相 | 男 | 前電力相 | 所属:バアス党;活動:2012年3月にEUが制裁対象に指定。 |
ファハド・ジャーシム・フライジ | 国防相 | 男 | 留任 | 活動:2011年11月にEUが制裁対象に追加。2013年5月にアメリカ財務省が制裁対象に指定。 |
ワリード・ムアッリム | 副首相・外相 | 男 | 留任 | 所属:バアス党;活動2011年8月30日に米国が制裁対象に指定。2012年10月にEUが制裁対象に指定。 |
ムハンマド・アブドゥルサッタール・サイード | ワクフ相 | 男 | 留任 | 活動:2012年10月にEUが制裁対象に指定。 |
マンスール・ファドルッラー・アッザーム | 国務相(大統領府担当) | 男 | 留任 | 所属:バアス党;活動:2012年2月にEUが制裁対象に指定。 |
ムハンマド・イブラーヒーム・シャアール | 内相 | 男 | 留任 | 活動:2011年5月にEUが渡航禁止・口座凍結の対象に指定。2011年5月に米国が口座凍結などの制裁対象に指定。2011年11月にアラブ連盟が制裁対象に指定。 |
ハズワーン・ワッズ | 教育相 | 男 | 留任 | 活動:2012年7月18日に米国政府が制裁対象に追加。2012年10月にEUが制裁対象に指定。 |
ナジュム・ハマド・アフマド | 法相 | 男 | 留任 | 所属:バアス党;活動:2013年5月にアメリカ財務省が制裁対象に指定。 |
フサイン・アルヌース | 公共事業・住宅相 | 男 | 前公共事業相 | 所属:バアス党;活動:2014年5月にアメリカが制裁対象に指定。 |
アフマド・カーディリー | 農業相 | 男 | 留任 | 活動:2014年5月にアメリカが制裁対象に指定。 |
ビシュル・ヤーズジー | 観光相 | 男 | 留任 | |
ハサーン・ヌーリー | 行政開発相 | 男 | 留任 | 活動:2014年の大統領選挙の立候補を届け出た。2014年10月20日にEUが制裁対象に指定。 |
ニザール・ワフバ・ヤーズジー | 保健相 | 男 | 留任 | 活動:2014年10月20日にEUが制裁対象に指定。 |
リーマ・カーディリー | 社会問題・労働相 | 女 | 前社会問題相 | |
アフマド・ハムー | 工業相 | 男 | 2000年3月-2001年12月に工業相 | 所属:無所属 |
アディーブ・マイヤーラ | 経済・対外通商相 | 男 | 新任 | 2005年-2016年7月中央銀行総裁 |
アーティフ・ガーニム・ナダーフ | 高等教育相 | 男 | 新任 | 2012年7月-2016年7月スワイダ県知事 |
フサイン・マフルーフ・マフルーフ | 地方自治相 | 男 | 新任 | 2011年10月-2016年7月ダマスカス郊外県知事 |
アリー・ザフィール | 通信・技術相 | 男 | 新任 | |
アリー・ガーニム | 石油相 | 男 | 新任 | |
ムハンマド・ラーミズ・タルジャマーン | 情報相 | 男 | 新任 | 所属:バアス党 |
ムハンマド・アフマド | 文化相 | 男 | 新任 | |
アリー・ハンムード | 運輸相 | 男 | 新任 | |
ムハンマド・ズハイル・ハルブートリー | 電力相 | 男 | 新任 | 所属:バアス党 |
マアムーン・ハムダーン | 財務相 | 男 | 新任 | |
ナビール・ハサン | 水資源相 | 男 | 新任 | |
アブドッラー・ガルビー | 国内通商・消費者保護相 | 男 | 新任 | |
アリー・ハイダル | 国民和解担当国務相 | 男 | 留任 | 所属:SSNP(アリー・ハイダル派);活動:2012年10月にEUが制裁対象に指定。 |
アブドッラー・アブドッラー | 国務相 | 男 | 新任 | |
サルワー・アブドッラー | 国務相 | 女 | 新任 | 所属:アラブ社会主義連合 |
ラーフィウ・アブー・サアド | 国務相 | 男 | 新任 | 所属:共産党 |
ワフィーカ・フスニー | 国務相 | 女 | 新任 |
評価
今般の組閣では、国防、内務、外務などの治安や外交に関わる分野の閣僚が留任する一方、財務、電力、石油、運輸、経済・対外通商、国内通商・消費者保護などの経済分野の閣僚が交替した。また、中央銀行総裁にドゥライド・ダルガーム、計画・国際協力庁長官にイマード・アブドゥルガニー・サーブーニー(2007年~2014年に通信・技術相)が任命された。現在シリアでは紛争の被害や日本を含む欧米諸国からの制裁の影響で電力や燃料の供給、通貨の下落などの経済面での課題が山積しており、生活必需品の不足や価格の上昇で国民の不満も高まっている。シリアの内閣は、伝統的に外交や安全保障での活動よりも経済運営の分野での業績を期待されているため、今般の内閣にとっても経済面での課題への取り組みが優先されよう。しかし、紛争解決のめどがたたない現在のシリアを取り巻く国際情勢に鑑みれば、短期間のうちに課題を解消して国民生活の向上に資するような業績を上げるのはきわめて難しいだろう。
また、現時点では所属政党が判明していない閣僚が多いものの、これまでの与党の枠外から新たな党派や著名な政治家が参入するような大きな動きはなかったようである。
(主席研究員 髙岡 豊)
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