中東かわら版

№59 サウジアラビア:マディーナ、カティーフで自爆テロ事件が発生

 7月4日夕刻、マディーナおよびカティーフで自爆テロ事件が発生した。マディーナでは、警備員が預言者モスクに向けて駐車場を歩いていた人物を呼び止めようとしたところ、犯人は身に着けていた自爆ベルトを起動させ、自爆した。これにより自爆犯は死亡、警備員は4人が死亡、5人が負傷した。また、カティーフでは、シーア派のモスク付近で自爆テロが発生した。内務省の発表では遺体が3人分あり、身元を精査しているとのことだが、一部報道によると爆発は2回あり、自爆犯は2人いたとされている。同日にジッダで発生した事件と合わせ、サウジ国内で1日に3回(ないし4回)の自爆テロ事件が発生したことになる(ジッダでのテロ事件については以下を参照。「サウジアラビア:ジッダで自爆テロ事件が発生」『中東かわら版』No.59(2016年7月4日)

 内務省は、ジッダでのテロ事件について、犯人がパキスタン国籍の男であることが判明したことを明らかにしたものの、犯人の政治的背景や過激派組織とのつながりの可能性については言及しなかった。現時点で信頼できる犯行声明の発出はない。

  

評価

 一連の自爆テロ事件については、犯行主体がまだ確定しておらず、その動機も明らかになっていないため、これらが同一の組織によって計画的に行われたものであるかどうかも不明である。しかし、ジッダでの事件が米総領事館を狙ったものであり、カティーフでの事件がシーア派モスクを狙ったものであるならば、それぞれ多くのイスラーム過激派によって敵視される米国、シーア派を標的にした事件として説明することもできよう。他方、イスラーム第二の聖地であるマディーナにおいて、預言者ムハンマドが建設し、彼の墓も置かれている預言者モスクを標的にしたことは、犯行主体はどのような思想や口実に基づいて実行したのか、説明する必要があろう。

 「イスラーム国」はこれまでサウジアラビアで複数の攻撃を実施してきており、犯行声明も「イスラーム国」の「ナジュド州」や「ヒジャーズ州」などの名義で発出してきた(例えば、以下を参照。「サウジアラビア:「イスラーム国」が爆破事件に犯行声明を発表」『中東かわら版』No.26(2015年5月25日)「サウジアラビア:アシール州の治安部隊基地での自爆攻撃」『中東かわら版』No.68(2015年8月7日)。サウジ政府は犯行主体についてはいかなる可能性にも言及していないものの、SNSでは「イスラーム国」の犯行を疑う声が多数であり、「ダーイシュ(「イスラーム国」のアラビア語のアクロニム)は預言者のモスクと墓を侵した」というハッシュタグがTwitterでサウジ人を中心に広範に拡散している。

(研究員 村上 拓哉)

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