中東かわら版

№53 イスラエル・トルコ:約6年ぶりに関係正常化で正式合意

  2016年6月27日、イスラエルのネタニヤフ首相とトルコのユルドゥルム首相は、関係正常化で合意したと公式に発表した。イスラエルとトルコの代表団は、前日の26日に正常化の条件で最終的に合意していた。28日には両者による合意書の署名が行なわれる。

 かって良好だったイスラエルとトルコの関係は、2010年5月末に急速に悪化した。5月31日、ガザに向かっていた国際的な支援船団をイスラエル軍が拿捕した。この際、欧州などの活動家らは無抵抗で拿捕されたが、トルコのイスラーム系慈善団体IHHのメンバーらは、イスラエル軍の拿捕に抵抗した。その結果、イスラエル軍の銃撃で、トルコ人9人(その後1人が死亡し計10人)が死亡し、二国間関係は悪化した。

 米国が両国関係改善の仲介を行い、2013年3月、オバマ大統領がイスラエルを訪問した際、エルドアン首相(当時)との電話会談を大統領自身が仲介した。同電話会談にて、ネタニヤフ首相はトルコ人犠牲者が出たことを謝罪した。その後、事務レベルによる断続的な協議が継続されていた。イスラエル側の報道では、2014年2月には正常化案で合意が成立していたとも言われる。最近の動きでは、2016年3月20日、イスラエルのドリー・ゴールド外務次官がトルコを公式に訪問している。同3月31日には、ワシントンで開催された安全保障セミナーに参加したエルドアン大統領が、イスラエルのステイニッツ水資源・エネルギー相と会談するなど公式な場での高官・政治家の接触が増加していた。4月頃から、両国代表団が欧州で協議を行なっており、最終的な合意は近いと報道されていた。

 今回の合意により、イスラエルは、遺族への2000万ドルの「人道的基金」の提供を行い、トルコ側は拿捕に関係したイスラエル軍将兵に対する法的訴追を中止する。またトルコは、イスラエルのアシュドット港を経由した人道支援を行なうとともに、ガザ市内に発電所、病院及び住宅を建設する。今回の合意により、両国は、早急に大使を派遣し、関係の正常化を進める。

評価 

 ネタニヤフ首相は、トルコとの関係正常化は戦略的な判断だと述べた。イスラエルにとってトルコとの良好な関係が、戦略的な資産であることに疑問の余地はない。両国関係が改善することは、東地中海地域にあった不必要な緊張要因がなくなることを意味し、前向きの動きである。むしろ不思議なのは、イスラエルが戦略的に重要なトルコとの関係悪化をなぜ6年間も放置してきたかであるが、この点についての明確な答えはまだ見えていない。

 2010年5月末にトルコ人乗員9人が死亡した際、イスラエルは、現場で発生した不幸な偶発的事件として対処し、死者が出たことは本意ではないとトルコ側に謝罪する選択肢があった。しかし、当時のイスラエル政府は、イスラエル軍兵士に対する攻撃はテロ行為であるとしてトルコに対して強硬な姿勢で対応した。トルコ側は、公海上での海賊行為だと反発し、両者の対立が長期化した。

  2013年3月、ネタニヤフ首相とエルドアン首相が電話会談した後、両国間での協議が開始された。しかし、トルコ人犠牲者の遺族に支払うお金の法的な性格などで紛糾し、交渉が難航したようだ。ただ2014年2月には、協議はすでに合意に至っていたとの報道もあり、最後まで何が問題だっかたかははっきりしない。他方、関係悪化は、両国間の経済関係に大きな悪影響はなかったようだ。

 合意発表後にメディアが行なった世論調査では、イスラエルのユダヤ人の65%が合意に反対し、賛成は24%だった。72%が、2014年のガザでの戦闘で戦死し、ハマースが保持している2人の兵士の遺体返還も含めるべきだったとしている。報道では、エルドアン大統領はネタニヤフ首相宛に手紙を送り、ガザにある兵士の遺体返還に努力するとしたが、同問題は両国関係の正常化とは切り離して議論されている。またイスラエル側は、トルコ国内でのハマースの活動規制を要請したようであるが、ハマースの活動規制は合意の中にないようである。

(中島主席研究員)

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