中東かわら版

№54 トルコ:アタテュルク国際空港で自爆攻撃の発生

  6月7日にイスタンブル市街地で発生した自爆攻撃に続き、今度は空港が標的となった。6月28日夜、イスタンブルのアタテュルク空港で爆発が発生した。爆発があったのは国際線ロビーの入口付近で3名による犯行だと報じられている。

 事件後、現場に到着したユルドゥルム首相は記者会見で、今回の自爆攻撃で少なくとも36名が死亡、147名が負傷していると述べたうえで、イスラーム過激派組織「イスラーム国」による犯行である可能性を示唆した。だが、現時点で「イスラーム国」側からの正式な犯行声明は出ていない。 この事件により、アタテュルク空港の全ての発着便が運行を中止した。

 

評価

 トルコ国内での自爆攻撃が後を絶たない。2015年以降、一般市民を巻き込んだ爆発がアンカラやイスタンブルで断続的に発生しておりトルコ内外での不安定要素となっている。

 トルコ政府軍は、エルドアン大統領を中心に昨年の夏以降、「イスラーム国」や反政府武装組織クルディスタン労働者党(PKK)を相手に戦闘状態にあり、PKKの拠点と言われるトルコ南東部のディヤルバクル付近で大規模な空爆を行っているほか、南部のシリアとの国境付近では「イスラーム国」への掃討作戦を実施している。そのため、自爆攻撃を含む「テロ行為」がどちらの組織からの報復であったとしてもおかしくはない。しかしながら、これまでトルコ政府が「イスラーム国」の犯行だと公表してきた事件については「イスラーム国」側からの正式な犯行声明は出されていない。

 トルコ国内では、「イスラーム国」に対する脅威よりも長年にわたり対立関係にあるPKKに対する嫌悪感が根強い。また、トルコ軍によるPKK掃討作戦では一般のクルド系住民が多数犠牲になっていることもあり、PKKやその支持者側のトルコ政府に対する憎悪や不信感も根深い。

 今般の事件について、現時点で政府は「イスラーム国」による犯行の可能性が高いと指摘しているが、現時点ではその真相は不透明といえよう。

(研究員 金子 真夕)

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