中東かわら版

№45 イスラエル・パレスチナ:テルアビブ市内で乱射事件

 6月8日、午後9時半頃、テルアビブ中心部の大規模商業施設「サロナ・マーケット」にあるカフェで、屋外の席にいたパレスチナ人2人が客に向かって銃を乱射し、市民ら4人が死亡、6人が負傷した。警察は、銃撃犯のパレスチナ人2人(1人は負傷)を拘束した。同2人は、西岸南部ヘブロン近郊の村ヤッタの住民で従兄弟同士だと報道されている。目撃者の話では、2人はスーツを着ており、弁護士風あるいは超正統派風の服装をしていた。また注文をした後、カバンから銃を取り出し、無言のまま銃撃を開始した。乱射事件の起きた場所のすぐ北には国防省がある。

 ネタニヤフ首相は、事件直後にロシア訪問を終えて帰国した。同首相は、国防省に移動して説明を受けた。ネタニヤフ首相は、9日朝、安全保障閣議を開催して対策を協議すると報道されている。

 

評価 

 イスラエル国内の喫茶店内で銃乱射事件が起きたのは、最近では珍しい。イスラエル国内及び西岸で発砲事件は起きているが、路上での銃撃が大半である。テルアビブ市内では、1月に繁華街にあるバーの前でイスラエル・アラブ人による発砲事件が起き、イスラエル人2人が死亡する事件が起きているが、今回の事件とは性格がかなり異なるようだ。今回の銃撃犯2人は、カバンに銃を隠して喫茶店に入ったと報道されており、商業施設の警備体制に不備があったのかもしれない。

 昨年秋からパレスチナ人のイスラエル人攻撃が増加した結果、イスラエル人約30人、パレスチナ人約200人が死亡している。件数としては、ナイフあるいは包丁を持ったパレスチナ人によるイスラエル人攻撃が増加しているが、実際に殺害されたイスラエル人は、ナイフによる事件よりも銃が使用された事件のほうが多い。イスラエル治安機関シンベドが発表した数字では、2015年中に殺害されたイスラエル人は28人で、内ナイフで刺殺されたのは8人にすぎず、その倍の16人が銃で殺害されている。そのため、イスラエル国民はナイフによる襲撃に不安を強めたが、イスラエル軍・警察は銃による攻撃をより警戒していた。

 今回の事件は、リバーマン国防相に就任して以降、パレスチナ人による最初の大きなテロである。リバーマン国防相が、どのような対応をするかが注目される。

(中島主席研究員 中島 勇)

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