中東かわら版

№44 トルコ:イスタンブルで自動車爆弾が爆発

 最大都市イスタンブルで再び爆発が発生した。6月7日、イスタンブル旧市街のベヤズィット地区で警察車両を狙ったとみられる爆発があり、警察官7名、一般市民4名の計11名が死亡、少なくとも36名が負傷した。今回の爆発が起こったベヤズィット地区は、ブルーモスクやグランドバザール等、トルコ国内でもっとも有名な建造物があるスルタンアフメット地区に隣接し、イスタンブル市役所やイスタンブル大学にも近い場所である。

 現地報道によれば、今回の爆破事件は警察官が乗車しているバスが通過しようとしたところ、近くの自動車が爆発したもので、何者かが遠隔操作によって爆発させたとみられている。爆破に使われた車両はレンタカーで、同事件に関与したとされる4人が事件直後に拘束された。

   正式な犯行声明等は出されていないものの、地元当局や報道機関は、クルド系武装組織のクルディスタン労働者党(PKK)による犯行の可能性が高いとする見方を示している。

 事件を受け、インタビューに応じたエルドアン大統領は、今回の爆破について「容赦なくテロとの戦いを継続する」と述べ、強気な姿勢を崩していない。 

 

評価

  トルコ国内の治安は悪化の一途を辿っている。今回のように自動車を使用した爆破事件が2015年からアンカラやイスタンブル等の大都市で相次いでおり深刻な状況にある。特に朝や夕方の通勤時間帯を狙った爆破事件は、警察や軍関係者だけでなく一般市民をも巻き込んでの大惨事に繋がっている。

  「テロとの戦い」を掲げ、強気な姿勢を貫くエルドアン大統領を中心とした公正発展党(AKP)政権は、クルド系住民が多いトルコ南東部への空爆を強化している。政権の圧倒的な軍事力の下、PKKを中心とした反政府武装組織への攻撃が激化しているが、それへの報復として一般市民や外国人観光客が巻き添えとなる事件が相次いでいる。これによりトルコの主な外貨収入源である観光業は大きな打撃を受けている。トルコ文化観光省の2015年統計によれば、外国からの訪問者数は前年比-1.6%(3,624万人)、観光収入は同比-8.3%(315億米ドル、約3.7兆円)と、いずれも減少している。2016年に入り国内での自爆攻撃や爆破事件が後を絶たないことから、この数字はさらに悪化するものとみられる。

  トルコとクルドの関係悪化は難民問題や「イスラーム国」、シリア紛争に直接影響を与えることから複雑に絡んだ情勢の一層の混乱は避けられない。

(研究員 金子 真夕)

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