中東かわら版

№21 トルコ:ダウトオール首相の辞意表明

 ダウトオール首相は、5月5日、公正発展党(AKP)の執行部会後に行った記者会見で、同党の臨時党大会を5月22日に開催し党首選を行うことを決定したと発表、さらにその選挙に自分は立候補せず退くことを明言した。

 ダウトオール首相は同会見の中で、「私は自分自身の決断を悔いてはいない。AKPが今後も連帯していくためには、党首が交代することが正しいという結論に至った」と述べた。また、名前は伏せたが同じAKP党内の数名の同僚について批判しており、党内で徐々に孤立を深めていったことを匂わせた。

『Hurriyet』紙は、今回の辞意表明は、ダウトオール首相自身の失策による退陣ではなく、エルドアン大統領との政争に敗れたものであると報じている。辞意を表明する前日の4日夜、大統領と首相は約100分間にわたり会談を行ったものの、双方の隔たりを埋めることは出来なかった。ダウトオール首相は会見の最後に「エルドアン大統領との友情は永遠だ」と述べたが、両者の間にできた溝は深いと思われる。

 辞意表明を受けて、2日には38円台だったトルコリラは5日、35円台に急落、対ドルでは一時4.5%安にまで下がった。為替相場の急激な変動はトルコ経済の混乱を免れず内政に影響を及ぼしかねない。

 

評価

 エルドアンが大統領に就任した最大の目的は大統領権限を強化し、権力の全てをエルドアン自身が掌握することにあるとされてきた。そのためにエルドアンが後継者として首相に指名したのは、自分の言うことを聞く「イエスマン」かつ、外相として「ゼロ・プロブレム」と呼ばれる全方位外交を実践、国内外での知名度もあるダウトオールだった。

 AKPの党規では党首が首相を務めると定められており、エルドアンのシナリオ通り、2014年8月に党首に選出されたダウトオールが首相に就任した。エルドアンとダウトオールとの関係はうまくいっているようにみえたものの、現在の議院内閣制から大統領制への移行を推し進めるエルドアンと慎重な姿勢を崩さないダウトオールとの間で徐々に亀裂が生じていった。また、現行のトルコ共和国憲法では大統領は中立的な立場でなければならず、どの政党にも属してはならないと規定されていることから、エルドアンは大統領就任前にAKPを離党している。だが、AKPの国会議員はエルドアン支持者が圧倒的多数を占めており、エルドアンの意向に反した党運営や政策実行は困難だったとみられる。さらに中立的立場を堅持しなければならないはずの大統領が定期的に閣議を招集、2015年に行われた総選挙では相変わらず党の顔としてAKP支持を訴える選挙戦を展開するなど、就任当初から首相兼党首であるはずのダウトオールの影は薄かった。

 エルドアン大統領をめぐっては、大統領を批判するメディアやジャーナリストへの圧力やインターネットの規制、軍の弱体化などここ数年強権的な態度が批判されてきた。3月にはドイツのコメディアンから痛烈な風刺を受け、外交問題にまで発展している。首脳としての任期が長くなるにつれ自身の側近には「イエスマン」しか置かず、本人にとって耳の痛いことを言う盟友は次々と去っている。今回のダウトオール首相の辞任等によって大統領にさらに権力が集中することになれば、一層独裁化が進むことは間違いなく、問題が山積するトルコの今後が懸念される。

(金子研究員)

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