中東かわら版

№53 エジプト:カイロのイタリア領事館前で爆破事件

 7月11日、カイロ中心部のイタリア領事館前で駐車していた車が爆発し、1人が死亡、11人が負傷する事件が発生した。治安当局の捜査によると、車に爆発物が仕掛けられており、これが爆発した模様である。カイロでのテロ事件は7月1日にも起きたばかりである(検事総長暗殺事件)。

 事件当日、「エジプトのイスラーム国」名義で、イタリア領事館前爆破事件の犯行を認める声明がインターネット上で発表された。

 

 

 

評価

 事件は領事館の休日に起きたため、幸いにして犠牲者が少なかった。最近のエジプトにおいて、イスラーム過激派が外国領事館や大使館を攻撃対象としたことはなかったが、外国権益を狙うことによってエジプトへの外国人観光客の流れを止め、政府の経済回復政策に打撃を与えることが目的であろう。我が国を含む外国の諸関連施設も同様に標的となる可能性は否定できず、一層の注意喚起が必要である。

 そして犯行の実行主体であるが、声明の名義は「エジプトのイスラーム国」である。これまでエジプトに存在する「イスラーム国」支持勢力は、シナイ半島を中心に活動する「シナイ州」のみで、これが「イスラーム国」の戦果が発表されるインターネット・サイトに自派のエジプト国内での戦果を発表していた。「エジプトのイスラーム国」が「シナイ州」と別組織なのか、どのような集団を母体としているのか現時点では全く不明だが、今回の事件は、本土(シナイ半島以外)にも「イスラーム国」を支持する団体が存在することが示された。

 しかし、彼らが外国権益を狙い、エジプトの観光業や経済全体に打撃を与えることを意図しているとしても、そのような戦略は長期的にはイスラーム過激派の活動衰退をもたらすと考えられる。観光業の落ち込みによって失業者がさらに増えると、イスラーム過激派によって自分の生活水準が悪化したと考える人々は増え、それまで過激派を支持していた層からも離反者が出る可能性がある。そうなれば、過激派組織は戦闘員や支持者という人的資源の確保が困難になるだろう。外国権益の攻撃という戦術は、テロリストの信条や主張を恐怖によって効果的に社会に広める効果をもつが、長期的に見ると自らの首を絞める結果にもなりうる。

(金谷研究員)

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