中東かわら版

№54 イラン:核交渉の合意

 イラン核問題の解決を目指して交渉を続けていたP5+1とイランは、7月14日、「包括的共同行動計画(JCPOA)」で合意した。合意文書によると、イランは8~15年間、ウラン濃縮や研究開発を含む濃縮関連活動の制限、アラーク重水炉の設計変更を受け入れたほか、最大で25年間に及ぶIAEAの査察の受け入れ、IAEA追加議定書の適用を行う。また、核兵器の起爆装置の開発につながるような活動にも従事しないことになっている。

 制裁については、P5+1が国連安保理にJCPOAを支持する旨の決議案を提出することになっており、同決議の成立後、IAEAの検証を経た上で、国連安保理決議による核関連の対イラン制裁は全て解除される。また、EUによる制裁は解除されるが、米国による制裁は一時停止することとし、JCPOAの適用開始日から8年が経過するか、IAEAによって新たな結論が出されたときをもって完全に解除することで合意となった。

 

評価

 2002年にイランによる秘密裏の核開発計画が発覚して以来、13年間に及び続いていたイラン核問題は、歴史的な転換を迎えることになった。様々な留保がつきながらも、イランの核開発を一定期間制限し、国際的な監視下におくことで合意が成立したことは、欧米諸国にとって外交的な成果である。また、制裁の解除にこぎつけたイラン国内でも合意を歓迎する声が上がっており、テヘラン市内では若者を中心に祝賀ムードがあるという。

 今後、これらの合意を履行に移すため、各種手続きが進められていくことになる。米国、イラン双方に合意反対派は存在するが、政府権限で進められるものは順調に履行されていくことになるだろう。もっとも、将来的には合意事項の解釈をめぐって摩擦が発生する懸念があるとともに、政治指導者が交代することで合意自体が反故にされる恐れもある。また、イランによるテロ支援など、米国とイランとの間には核問題以外の問題が多く残されている。

 しかし、より重要なことは、米国とイランが「対話できるようになった」ことだろう。2013年9月の国連総会で行われた米・イラン外相会談は、1979年のイラン革命以来初めての会談があったが、今や両国の間に会談の場を持つことをタブー視する発想はない。喫緊の課題としては、イランの隣国にあたるアフガニスタン・イラクの安定や、シリア・イエメン情勢を巡ってハイレベルでの議論が行われる可能性は高い。もっとも、このような米・イラン関係の改善は、地域における伝統的な米国の同盟国であるイスラエルやサウジアラビアを警戒させるものであり、彼らが独自の対応に出ることも考えられる。

(村上研究員)

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