中東かわら版

№183 イスラーム過激派:アルジェリアでの石油施設襲撃事件

 2016年3月18日、アルジェリア南部のアイン・サーリフでイギリス企業、ノルウェー企業が操業している石油施設がロケット弾攻撃を受けた。攻撃による死傷者はなかったが、19日に「イスラーム的マグリブのアル=カーイダ」が事件を自らの作戦であると主張する犯行声明を発表した。声明は、アイン・アミーナースのガス施設襲撃事件(2013年1月)に言及しつつ、西側企業を攻撃したと主張、今後さらに強力な手段で西側の石油・ガス企業を攻撃することが可能であると脅迫した。

評価

日本人も多数犠牲となったアイン・アミーナースの襲撃事件は、本来は「イスラーム的マグリブのアル=カーイダ」から分裂した「ムラービトゥーン」が引き起こした事件であるが、この両派は2015年後半に再統合し、マリ、ブルキナファソ、コートジボワールなどでフランスをはじめとする諸外国の軍・外交団・観光客への攻撃を強化していた。これは、活動に必要なヒト・モノ・カネなどの資源の調達や国際的な注目度で「イスラーム国」の後塵を拝しているアル=カーイダ関連の諸派による巻き返しの一環と見られる。アルジェリアのイスラーム過激派の武装闘争で石油施設が攻撃対象となることは比較的珍しい事案であるが、「イスラーム的マグリブのアル=カーイダ」の犯行声明をみると、今後もアルジェリアの石油分野で活動する諸企業への攻撃や脅迫が続くことが予想される。また、声明は国際的に高い関心を集めたアイン・アミーナース事件に言及するなど、攻撃対象の選定で国際的な関心を集めやすい外国企業・外国人が優先される可能性を示している。「イスラーム的マグリブのアル=カーイダ」は、世界的にアル=カーイダの関連団体の活動が停滞する中、少ないとはいえ外国権益に対する作戦を実行する団体であり、これが「イスラーム国」との競合の文脈で攻撃対象として外国権益への関心を高めている。我が国を含め、同派の活動地域であるアルジェリア、サハラ諸国で活動する外交団・企業・旅行者などの安全確保が一層重要となろう。

(イスラーム過激派モニター班)

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