中東かわら版

№163 アルジェリア:憲法改正案の可決、成立

 2月7日、憲法改正案の採決のため両院合同会議が開かれ、全議員606人のうち517人が出席し、賛成499、反対2、棄権16で、憲法改正案は可決された。改正箇所は74項目、38条文で、一括採決にかけられた。現行憲法の第176条には、両院合同会議で4分の3以上の賛成を得られた場合は国民投票にかける必要がないと規定されており、これに基づき、改正憲法は成立した。

 賛成したのは、与党の民族解放戦線(FLN)及び民主国民連合(RND)に加え、無所属議員、労働党員の一部、上院の大統領任命議員など。社会主義勢力戦線(FFS)、緑のアルジェリア連合(穏健イスラーム勢力)、公正開発戦線(FJD)は、憲法改正案は真の民主主義を実現するものではないとして、採決をボイコットした。

 可決された後、両院合同会議の議長を務めたベンサーリフ上院議長は、憲法改正が実現したことはアルジェリアで民主主義が真に勝利した証である、とのブーテフリカ大統領のメッセージを代読した。憲法改正の主な内容は以下のとおり(2016年1月14日付『中東かわら版』No.154を参照)。

  • 大統領任期は5年、再選は1回まで。同規程を改正することはできない。
  • タマジグト語を(アラビア語とならぶ)公用語とする。
  • Ÿ信条の自由、表現の自由、集会の自由を保障する。
  • Ÿ上下院はそれぞれ、月に1度、野党が提案する作業日程について検討する会合を開く。
  • Ÿ議会内野党は憲法評議会に対して違憲審査請求権を行使できる。
  • Ÿ大統領は、議会内最大会派との協議にもとづき、首相を任命する。
  • 独立最高選挙監視機構を設置する。機構長には無党派の人物が就任する。
  • 司法の独立を強化する。判事、及び最高司法評議会の独立性を強化する。
  • 競争的経済の形成。
  • 在外国民、若者、女性による開発への貢献を奨励する。

 

評価

 政府は、憲法改正案はさまざまな政治勢力、社会勢力を交えた包括的な協議に基づいて作られ、アルジェリアの社会・政治・経済面の課題に対処できる憲法であると強調している。採決の日には、包括的かつ合意型の憲法改正を実現するため、上下院の会派代表に憲法改正案についての意見を表明する時間(各会派ごとに10分)が与えられた。

 しかし、今回の憲法改正は、2011年初頭に起きた民衆の抗議行動に対して政府が憲法改正公約を守り、民主化に積極的であることを演出するための表面的な試みに過ぎない。たしかに、大統領の再選を1回までに限定したことやタマジグト語の公用語化は評価できる。しかし、改正条項内で強化されたとされる政治的自由の保障や野党の政治活動は、あくまで文面上の改正であって、実際に自由な政治活動が実現されるとは考えられない。そもそも憲法改正案の作成過程は非公開であり、改正案は条文ごとの採決ではなく一括採決がとられ、国民投票にかけられなかったことを踏まえると、今回の憲法改正も以前と同様に政府主導で行なわれたとしか言えない。

 むしろ、憲法改正の目的は、失業問題や政財界の汚職で国民に政治不信感が広がるなか、政治改革の実績をつくることで政府の正統性を高め、来るべきポスト・ブーテフリカ体制の「地ならし」をすることと考えられる。最近のDRS改革と解体も、ブーテフリカ後の基盤づくりの一環である。「アラブの春」によって周辺諸国が否応なしに政治体制の変化と不安定化を経験していくなかで、これまでアルジェリアは体制維持に成功している。しかし、大統領の交代が現実的な可能性として迫っており、大統領・DRS関係が急激に変化していることを考えると、アルジェリアの政治体制にも今後数年間において少なからず不安定要素を内包していると考えるべきであろう。

(金谷研究員)

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