中東かわら版

№154 アルジェリア:憲法改正案の発表

 12月28日にブーテフリカ大統領が承認した憲法改正案が、1月5日、アフマド・ウーヤヒヤー大統領府長官によって公表された。主な改正内容は、大統領任期の制限、タマジグト語の公用語化、議会における野党の役割の拡大、司法の独立、市民的自由の保障、独立選挙監視機構の設置、投資・貿易の自由の保障などである。改正案は1月11日に閣議承認され、憲法評議会に送付された。ウーヤヒヤー大統領府長官は、2月中旬までに議会に憲法改正案を提出する予定であると述べている。

憲法改正は、2011年の「アラブの春」においてアルジェリア国内でも抗議行動が起きた際にブーテフリカ大統領が明言した政策である。それから5年間、数度に渡り、政府と野党、有識者、市民団体との間で改正議論が行われ、ようやく議会で審議されうる改正案の形が整ったことになる。以下は憲法改正案の主な内容である。

  • Ÿ 大統領任期は5年、再選は1回まで。同規程を改正することはできない。
  • Ÿ タマジグト語を(アラビア語とならぶ)公用語とする。
  • Ÿ 信条の自由、表現の自由、集会の自由を保障する。
  • Ÿ 上下院はそれぞれ、月に1度、野党が提案する作業日程について検討する会合を開く。
  • Ÿ 議会内野党は憲法評議会に対して違憲審査請求権を行使できる。
  • Ÿ 大統領は、議会内最大会派との協議にもとづき、首相を任命する。
  • Ÿ 独立最高選挙監視機構を設置する。機構長には無党派の人物が就任する。
  • Ÿ 司法の独立を強化する。判事、及び最高司法評議会の独立性を強化する。
  • Ÿ 競争的経済の形成。
  • Ÿ 在外国民、若者、女性による開発への貢献を奨励する。

 

評価

 政府は、憲法改正案は、政府と諸政党、市民社会が5年の歳月をかけて十分に協議した結果の「結晶」であるとして、これを公表した。改正案は大統領が任命した委員会によって作成され、審議過程は非公開であった。

 改正案のなかでは、まず、大統領の再選を1回までに限定し、かつ同規程を改正不可能としたことが評価される。憲法の大統領再選規定は、2008年、ブーテフリカ大統領が3期目をねらった大統領選挙(2009年)に立候補できるようにするため、再選を1回に限定した条項が削除された。今回の改正では再選1回規定が復活する形となり、大統領個人の権力の濫用や腐敗が制限されることが期待される。また、少数派のベルベル人が長年政府に訴えてきたタマジグト語の公用語化も、少数派の権利の保障やアイデンティティーの尊重という観点から評価できる。

 他方、その他の改正箇所については、政治的競争の促進や透明性の確保に効果をもたらすとは期待できない。例えば、首相の任命を大統領と議会内最大会派との協議にもとづいて行うことや、野党が議会での議案の決定に参加できること、また野党が憲法評議会に違憲審査を請求できるという変更点は、民族解放戦線(FLN)が行政府・立法府・司法府を支配している状況では、公平な政党間競争を促進する役割を果たさないだろう。また、独立最高選挙監視機構は、あくまで選挙過程の監視が役割であって選挙過程の実施(立候補申請の受付、立候補者名簿の作成、集計作業、結果発表)ではないため、政府の選挙過程への意図的介入を妨ぐ機能を果たしえない。したがって憲法改正案は、アルジェリア政治の根本的特徴である秘密性、不透明性(大統領と軍部による非公式な政治決定)を崩すものにはなりえないだろう。

(金谷研究員)

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