中東かわら版

№153 イラン:サウジとの断交後のイラン政府の対応

 1月3日にサウジアラビアがイランとの国交断絶を発表した後、イラン政府は様々な対応を見せている。1月6日深夜から7日未明に行われたサウジアラビアによるイエメン空爆では、イラン外務省は同爆撃においてイラン大使館が狙われたと主張し、同問題を国連安保理に付託すると述べている(同問題については「サウジ軍機によるイラン大使館爆撃情報」『中東かわら版』No.150(2016年1月8日)を参照)。また、1月10日付の『The New York Times』にザリーフ外相による寄稿が掲載されたが、ザリーフ外相はサウジが過激派を支援しており、宗派主義を煽っていると強く非難した。

 他方、イラン政府はサウジ大使館襲撃事件については厳しい対応をとっている。1月9日、内務省報道官は、テヘラン副知事(治安担当)が同事件において職責を果たさなかったとして、同副知事を解任したほか、大使館襲撃を行った者60人を拘束したことを発表した。

 なお、12日に米国防総省は、ペルシャ湾を航行する米海軍の哨戒艇2隻がイランによって拿捕されたと発表したが、イラン側は同船および乗組員の安全について保証すると回答している。イラン革命防衛隊が発表した声明によると、同船は12日午後4時30分にペルシャ湾のイラン領海内に侵入したことにより、停船させたとのこと。米国側は、同船および乗組員についても早期に解放される見通しであると述べている。

 

評価

 サウジ・イランの断交を巡る両国間の緊張は、徐々に落ち着きを見せ始めている。サウジ、イラン双方ともに相手方の対応への非難を強めているが、言説上の非難を越えるものではなく、これまでのところ外交問題として処理されている。

 イラン側の対応としては、サウジによるイエメンのイラン大使館爆撃を主張したことがエスカレーションを高めるものとして警戒されたが、その後、同主張の信憑性について疑問が付されたことにより、これまでのところ大きな問題とはなっていない。また、12日の米海軍船の拿捕についても、当初はイラン側の意図を巡って様々な憶測が流れたが、早々にイラン側から乗組員の安全の保証が得られたことで、沈静化する見通しだ。

 国内向けにも、サウジの行動を非難する一方、大使館襲撃については法に則った適正な対処を行っていると評価できよう。イラン政府にとっては、数日以内に核合意による制裁解除を迎え国際社会に「復帰」しようとするところでおり、サウジ・イランの対立関係が悪化することを望まない方針と見られる。

(研究員 村上 拓哉)

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