中東かわら版

№123 EU:西岸の入植地産品に対する対応

 11月11日、EUは、西岸にあるイスラエルの入植地で生産された商品について、消費者に占領地内にある入植地で生産されたものであることを示すラベルを貼ることを定めたガイドラインを採択した。イスラエル側は、同措置に対して強く反発し、米国訪問中のネタニヤフ首相は、EUは自分自身を恥じるべきだと非難した。イスラエル外務省は、抗議の姿勢を示すために、EUとの間で行われている対話の一部を数週間停止すると発表したが、科学、経済分野での対話は継続するとした。イスラエル側は、世界に多数の領土紛争がある中で、EUはパレスチナだけについて例外的対応をしており、「二重基準」だと非難している。パレスチナ側は、同措置を歓迎した。

 

 評価

 EUが採択したのは、加盟国が個々の判断で、自国内で販売されているイスラエルの入植地産品について、占領地にある入植地で生産された物であることを消費者に知らせるラベルを貼ることを定めたガイドラインである。EUは、イスラエル製品を特恵待遇にしているが、西岸(東エルサレム含む)はイスラエル領ではないとして、同地域の産品を特恵待遇から除外してきた。今回の決定は、それをさらに進める措置であるが、EUの一部の国は、すでに入植地産品である旨のラベル表示を開始している。

 イスラエルが反発しているのは入植地産品であるとの表示以上に、EUが西岸地区はイスラエル領ではないと明確に規定している点である。イスラエルは、最終的な国境線は交渉で決まるとの立場から、EUの行動は直接交渉に影響を与えるものであると批判している。しかし、EUは、西岸(東エルサレム含む)はイスラエル領ではないと判断し、イスラエルに対して、EUと通商関係を持つのであればEUの基準に沿って交易することを求めている。こうしたEUの政策に不満を持つイスラエルの極右政治家らは、アジア諸国との経済関係を強化することでEUに代わる経済関係を構築する戦略を主張している。成長の著しい中国やインドなどのアジア諸国は貿易相手としてEU以上になれるかもしれないが、EUとイスラエルの間にある政治、教育、文化、社会、歴史、科学技術開発、研究など重層的な関係は代替できない。イスラエルとEUの結びつきは強いために、イスラエルのEUに対する反発は、より感情的なものになっている。またEUが入植地について断固たる姿勢を維持している背景には、加盟国の大半がイスラエルのパレスチナ占領継続に対する強い不満を有していることがある。

 イスラエルは、世界には多くの領土紛争があるにもかかわらず、EUはパレスチナ問題だけ異なる対応をしており「二重基準」だと反発している。しかし現在ある領土紛争の中で、紛争地域の主権が空白状態で未確定なのは西岸とガザだけであり、EUの対応が特別になるのは当然だろう。イスラエルが、パレスチナとの直接交渉を行い、パレスチナとの国境線を決めれば、EUはそれに従った対応をするだろう。その作業が進まないことが現在の問題であり、その主要な原因はイスラエルにもあることは周知の事実である。

(中島主席研究員)

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