中東かわら版

№112 イスラエル・パレスチナ:継続する暴力連鎖(2)

 

 イスラエルとパレスチナ間の暴力連鎖は、10月下旬になっても勢いが落ちていない。10月中の双方の死者数(22日時点イスラエル側報道)は、イスラエル人10人、パレスチナ人47人となっている。

 こうした中、米国のケリー国務長官が仲介作業を開始し、まず22日にベルリンでイスラエルのネタニヤフ首相と会談した。ケリー国務長官は、その後、ヨルダンを訪問し、24日にアブドッラー2世国王とパレスチナ自治政府のアッバース大統領と会談した。一連の会談の後、ケリー国務長官は、東エルサレム旧市街にある聖地内に監視カメラを設置することで合意が成立したと発表した。同長官は、監視カメラを設置することで、聖地内で「現状維持」がなされていることについての透明性が高まるとし、カメラ設置は事態改善のための最初の一歩であるとした。同日夜、ネタニヤフ首相は、イスラエルに東エルサレムの聖地の現状を変える意思はないとする声明を出した。27日、イスラエルとヨルダンは、数日内に監視カメラが設置されるとした。

 聖地での現状維持とは、東エルサレム旧市街の聖地(「ハラム・アッシャリーフ」(高貴なる聖域)/「神殿の丘」)の境内で礼拝を行なうのはイスラーム教徒に限定され、他の宗教の信者らは境内を訪問することはできるが、礼拝は禁止されていることを指す。

 

評価

  暴力連鎖を停止させるための仲介作業を開始したケリー国務長官が最初の行なった提案は、東エルサレムの聖地に関わる事項であった。このことは、現在の衝突の主要な背景の一つが東エルサレムの聖地をめぐるパレスチナ・ヨルダンとイスラエル間の対立であることを示している。両者の間で聖地をめぐる対立・軋轢があることは周知の事実であるが、聖地問題が、双方の暴力激化の主要な要因として浮上していることが、今回の衝突の特徴である。パレスチナとヨルダンは、イスラエル極右が東エルサレムの聖地の現状を変更しようとしていると警戒してきた。9月以降の衝突激化の背景には、パレスチナ側のそうした不満と懸念の蓄積もある。

 一方、ネタニヤフ首相は、連立内閣に極右勢力が含まれるため東エルサレム問題で弱腰の姿勢は取れない。極右政党は、強硬な立場を主張するがパレスチナ側からの反発に対処するための具体的な政策立案能力がない。そのためネタニヤフ政権には、事態を改善する政治的なビジョンはなく、衝突を繰り返す東エルサレムのパレスチナ人に対する規制や罰則の強化を進めるしか対応策がない。

 イスラエルでの世論調査では、ケリー国務長官が事態を改善できると考えるイスラエル国民はほとんどいないが、効果のある対応策を出せるのはケリー国務長官の仲介しかないのが現状である。

(中島主席研究員)

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