中東かわら版

№70 トルコ:在イスタンブル米国総領事館前での発砲事件

 8月10日(月)、イスタンブルの米国総領事館前で女性2名が発砲する事件が起きた。警察官が応戦したものの犯人はその場から逃げ去った。トルコのドアン通信によると、犯人の一人と見られる女は、その後、イスタンブルのサルイェル区の家で拘束された。今般の発砲事件による死傷者は出ていない。

 更に同日、イスタンブルのスルタンベイリ地区(イスタンブルのアジア側)にある警察署でも爆破事件が発生、これによって警察官3人と民間人7人が負傷した。

 トルコは7月25日に「イスラーム国」とクルディスタン労働者党(PKK)の拠点に対し初めて空爆を行って以降、テロ対策強化のため1,300名以上の過激派組織の活動家、またその支援者と見なされた者たちを検挙、取締りを強化するなど、国内の警戒レベルの引き上げを行っている最中だった。

 

評価

 現時点において詳細は明らかとなっていないが、極左過激派組織の一つである「革命的人民解放党/戦線」(DHKP/C)のメンバー数名が過去数週間内に拘束された人物の中に含まれていることから、DHKP/Cの犯行によるとの見方がある。同団体は、2013年、アンカラの米国大使館に対する自爆攻撃について犯行声明を出しており、この事件によってトルコ人守衛が1名殺害されている。また、2015年1月にイスタンブルの派出所前での自爆攻撃では2名が死亡、3月にはイスタンブル裁判所での検察官拘束事件、4月1日にはイスタンブル県警本部での銃乱射事件を引き起こしており、トルコ国内のみならずEUや米国からもテロ組織として認定されている。DHKP/CはPKKとのつながりも指摘されていることから、連立政権樹立か再選挙かの目処が未だ立たず、不安定な舵取りが続くトルコ内政が一層混乱に陥ることが懸念される。

(研究員 金子 真夕)

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