中東かわら版

№39 リビア:アジュダービヤ空爆に関してアンサール・シャリーアが声明を発出

 6月16日、リビアのアンサール・シャリーアが、アメリカ軍によるリビア北東部アジュダービヤの空爆で7名の戦闘員が死亡した旨発表し、7名に対する弔辞を発出した。この空爆は、一部の報道機関がムフタール・ベルムフタール死亡説(2015年6月15日付『中東かわら版』No.38を参照)と合わせて報道した空爆と考えられる。しかし、今回の声明を見てみると、ムフタールの死を示唆するような文言は見られない。

評価

 まず今般の声明に拠れば、アメリカ軍による空爆で死亡したとされる7名のなかに、ムフタール・ベルムフタールの名前はない。同氏はアブー・アッバース・ハーリドとも呼ばれているが、その名前も見当たらない。さらに、空爆で死亡した者はこの7名以外にはいないとも書かれてある。なお、声明文に掲載された7名は以下のとおり=①アティーヤ・ブー・ハディーダ・アル=マグリビー、②ナージー・ブー・ハディーダ・アル=マグリビー、③サイード・ブー・ハジーム・アル=マグリビー、④アフマド・ヒターブ・アル=ファーヒリー、⑤ハムザ・アル=マシーティー、⑥アリー・バーディー、⑦ファルジュ・ドゥーマ・アル=ザウィー。

 一方、ムフタールが属する過激派「ムラービトゥーン」の声明をしばしば発表する『アフバール』紙(モーリタニア、6月15日付)は、リビア情報筋の話として、今般の空爆に関して、アメリカ軍はムフタールも参加したアジュダービヤ近郊で開催された会議を標的に空爆したと報じている。リビアの『バワーバ・ワサト』紙(6月14日付)も、空爆のあった14日早朝に、アジュダービヤでアンサール・シャリーアが戦闘を行っていたことを報じている。これらの報道から、空爆が行なわれたアジュダービヤにアンサール・シャリーアと共にムフタール自身がいた可能性は高い。米国防総省も、空爆の標的がムフタールであったことを明らかにしている。

 しかし、アンサール・シャリーアは今次声明でムフタールの死亡説を事実上否定している。米国防総省も死亡を確認しておらず、リビア政府(東部ベイダ)によるムフタール死亡の発表も証拠を伴わないものであった。よって、ムフタールの死亡情報は信憑性に欠けると判断するのが妥当であろう。

(イスラーム過激派モニター班)

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