イベント情報

2.20 連続講演会「ペルシア湾岸地域を取り巻く国際情勢と海洋の安全保障」第2回

  • 講演会の報告
  • 公開日:2018/02/22

2018年2月20日(火)、フォーリン・プレスセンター「会見室」にて、連続講演会「ペルシア湾岸地域を取り巻く国際情勢と海洋の安全保障」第2回を開催しました。

 

講師・演題:

八塚正晃(防衛研究所研究員)「中国の中東政策:「一帯一路」構想における関与の様態」

栗田真広(防衛研究所研究員)「中国海軍のインド洋進出とグワダル港:「基地化」の虚実」

村上拓哉(中東調査会研究員)「サウジアラビアの海軍増強計画:イランの脅威への対処と紛争の管理を巡る問題」

 

(講演会要旨)

八塚正晃(防衛研究所研究員)「中国の中東政策:「一帯一路」構想における関与の様態」

2016年の習近平国家主席による中東歴訪など、近年、中国による中東の関与は拡大していると言える。中国の中東政策には、内政不干渉、政治問題における中立性の維持といった特徴が見られ、手段としては経済中心のアプローチとなっている。その中でも、「一帯一路」構想を実現させるにあたり、中東はインド洋と地中海をつなぐ要所にあるという位置づけであり、近年は石油輸入の拡大などからも中東が重視されるようになってきた。中東との経済関係の拡大にともなって、中東における経済的利権を保護する観点から軍事的な関与も増加するようになり、中東の紛争地から自国民の輸送オペレーションを実施したり、現地で自国が利用できるインフラ・港湾の整備を進めたりしている。2017年には中国初の海外基地となるジブチの海軍保障基地の運用が開始されたが、これは中国の軍事外交の拠点などとして利用されていくと見られる。一方、中国が米国に代わって中東でプレゼンスを発揮する可能性は低く、当面は米露と協調しながら関与を漸進的に深めていくことになるだろう。

 

栗田真広(防衛研究所研究員)「中国海軍のインド洋進出とグワダル港:「基地化」の虚実」

中国のインド洋進出の象徴として、しばしばパキスタンのグワダル港に注目が集まる。グワダル港は、中国の「一帯一路」構想の旗艦事業である中パ経済回廊構想において「海の出口」となり、中国が大規模な投資を進めてきた。この港が中国の軍事基地化することが懸念されているが、中国政府はグワダル港開発を商業的なプロジェクトと説明し、慎重な姿勢を維持してきた。グワダル港は軍港とするには地理的に攻撃に脆弱であり、近隣にはパキスタン海軍が基地を置く別の軍港もあるため、これを軍事基地化する合理性は低いとも言える。他方で、グワダル港が中国にとって守るべき経済権益となるのであれば、中国海軍がインド洋にプレゼンスを展開することを正当化しやすくなる。過去の中国・パキスタン当局の発言も、グワダル港自体の軍港化は否定しつつも、それを防護する態勢は強化するという点では矛盾していない。今後グワダル港が商業港として経済的に成功すれば、それは中国海軍のインド洋進出の正当性を得られるという戦略的な利益が商業的利益と両立することになり、中国・パキスタンの双方にとって望ましいシナリオとなろう。

 

村上拓哉(中東調査会)「サウジアラビアの海軍増強計画:イランの脅威への対処と紛争の管理を巡る問題」

中東における米国の影響力の低下は地域諸国の台頭と対立の激化を招いており、サウジアラビアはイランに対抗するため軍拡を進めている。サウジ海軍では1980年代以降、大規模な拡張は行われてこなかったが、2008年頃から「サウジアラビア海軍増強計画Ⅱ(SNEPⅡ)」と呼ばれる計画が進められており、新たに米国の最新鋭の沿海域戦闘艦を4隻調達するなどペルシア湾を担当する東部艦隊の増強が図られている。また、米国の研究機関が2015年に発行した報告書ではアデン湾やアラビア海を担当する南部艦隊の創設が提唱されているが、近年のジブチでの海軍基地建設、オマーン湾での軍事演習の実施など、サウジ海軍の活動範囲が南方に拡大する兆候が見られる。これらのサウジ海軍の増強・拡張は、イラン海軍との間で偶発的な衝突が起きる可能性を高めることになるが、両国間の紛争を抑制する超大国や国内の穏健派が不在の中、紛争のエスカレーションをどう管理するかが今後の大きな課題となるだろう。

 

質疑応答では、中国の「一帯一路」構想における中東でのルート設定、マラッカ・ディレンマの解消とグワダル港の位置づけ、サウジ南部艦隊の創設とイエメン紛争の関係性などについて質問があった。

 

(※講演内容は講師の個人的見解であり、講師の所属先の立場や見解、認識を代表するものではありません)

 

以上

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