10.11 第15回中東情勢分析発表会(村上研究員)
- 講演会の報告
- 公開日:2016/10/01
報告者:村上拓哉・中東調査会研究員
演 題:「米国の湾岸政策:オバマ政権の不介入主義と揺らぐ同盟」
まず報告者から、米国の湾岸政策を評価する際には、大統領という個人の要素からだけでなく、国際システムの長期的変化、ついで国家という要因から分析していくことの重要性が説明されました。オバマ政権期の対話を重視し、不介入主義をとる外交政策は、イランとの核合意を達成する一方、サウジ、イスラエルといった同盟国の不信と地域諸国の台頭を促進してきましたが、それは多極化の進行と米国の「国力」低下を背景にしており、いずれの大統領候補が政権を手にしても、不介入主義は継続するだろうという見通しが提示されました。
質疑応答では、湾岸・中東地域に対するロシアと中国の影響力、アメリカとサウジの「同盟国」としての定義、アメリカの外交政策における「イラン核合意」の意義等について質問があり、報告者から説明が行われました。
この分析発表会は、中東調査会の研究員が担当地域・国の情勢について中・長期的な視点から分析を行い、その成果を発表するとともに、参加者の方々と意見交換を行う場です。
(※講演内容は発表者の個人的見解であり、発表者の所属先の立場や見解、認識を代表するものではありません)
研究員略歴
村上 拓哉 (むらかみ たくや)
専門:湾岸地域の安全保障・国際関係論、現代オマーン政治
職歴
2014年 4月 中東調査会研究員(現在に至る)
2011年 2月 在オマーン日本国大使館専門調査員(~2013年2月)
学歴
2016年 3月 桜美林大学国際学研究科博士後期課程満期退学
2009年 9月 クウェート大学留学(~2010年8月)
2009年 9月 桜美林大学国際学研究科博士前期課程修了(修士号)
2007年 3月 中央大学総合政策学部卒業
主な業績
- 「湾岸地域で高まる緊張:オバマ政権の不介入主義と揺らぐ同盟」『中東研究』第527号、2016年9月、64-75頁
- 「イラン核合意のスポイラー」『海外事情』第64巻9号、2016年9月、78-90頁
- 「対イラン制裁緩和後の中東地域秩序:サウジアラビアとイランの対立の展望」『CISTECジャーナル』第163号、2016年5月、2-9頁
- 「アラビア半島諸国:中東地域秩序における台頭」松尾昌樹・岡野内正・吉川卓郎編『中東の新たな秩序』ミネルヴァ書房、2016年5月、201-220頁
- 「湾岸諸国による新たな積極行動主義:体制転換の脅威と対テロ政策の拡大」川上高司編『「新しい戦争」とは何か』ミネルヴァ書房、2016年1月
- 「湾岸地域における新たな安全保障秩序の模索――GCC諸国の安全保障政策の軍事化と機能的協力の進展――」『国際安全保障』第43巻第3号、2015年12月
- 「サウジアラビアとイランの「冷戦」――「権力闘争」か「宗派対立」か」『中東研究』第523号、42-52頁、2015年5月
- 「仲介者オマーンによる対イラン政策と今後の湾岸情勢の展望」『中東研究』第518号、39-46頁、2013年10月
- 「2011年オマーンにおける抗議活動の展開と収束――紛争のデスカレーションの事例として」『中東研究』第513号、94-104頁、2012年2月
以上