『オマーンを知るための55章』
松尾昌樹編『オマーンを知るための55章』(明石書店、2018年2月)が発刊されました。第5章「飛び地:ムサンダム半島、クムザール、ホルムズ海峡」(33-36頁)、第25章「カーブースとオマーン・ルネサンス:近代化への道」(126-129頁)など10章と2コラムを村上研究員が執筆しています。
[内容説明]
アラビア半島の南東端、ペルシャ湾の要衝・ホルムズ海峡の一部を領土にもつオマーン。地政学的に重要な役割を有し、近年でも中東地域秩序を構成する新しい極として注目を集める一方、イスラーム教の少数派「イバード派」揺籃の地でもあるオマーンには、アラブの古い伝統が多く残されている。多様な民族、独特な文化・社会構造をもつ「アラビア半島の宝石」の魅力を余すことなく描き出す。
[目次]
はじめに:アラビア半島の宝石、オマーンへようこそ
Ⅰ 自然・地理
第1章 オマーンの自然:変化に富んだ国土
第2章 ペルシャ湾とアラビア海を臨む:海岸部の自然と社会
第3章 城塞都市マスカト:海洋帝国を指揮した陸の孤島
第4章 峻険な岩山と砦、オアシスの世界:内陸部の自然
第5章 飛び地:ムサンダム半島、クムザール、ホルムズ海峡
第6章 緑あふれるドファール:オマーンのもう一つの顔
第7章 イムラーンの墓とヨブの墓、モーゼと緑の男:オマーンと聖書の世界
第8章 進む観光開発:新しい発展を目指して
第9章 ファラジュのある風景:オマーン社会を形作る流れ
第10章 乳香と香木:オマーン文化の高貴な香り
第11章 オマーンの大地に刻まれた10億年の変動:壮大な自然景観と変動のドラマ
第12章 世界最大のオフィオライト:1億年前の海洋地殻−上部マントル
コラム1 オマーンへ行ってみよう:日本からオマーンへのルート
Ⅱ 歴史
第13章 古代文明マガン:オマーン伝統文化の礎
第14章 オマーンとイスラーム:初期イスラームへの貢献
第15章 イバード派:その歴史と特徴
第16章 旅行家が見たオマーンの中世:中東の歴史世界のなかで
第17章 ポルトガルを追撃するアラブ人:ヤアーリバ朝と海洋国家への道
第18章 オマーンの英雄:アフマド・ブン・サイード
第19章 オマーン海洋帝国とイギリス:マスカトに接近するイギリス東インド会社
第20章 東アフリカへの遷都:知られざる「オマーン帝国」
第21章 斜陽の帝国:ファイサル、タイムール、サイードの時代
第22章 イマーム国の台頭:分裂するオマーン
第23章 オマーンの保護国化:財政を通じたイギリスの支配
第24章 独立への道:アフダル戦争とドファール戦争
第25章 カーブースとオマーン・ルネサンス:近代化への道
コラム2 「マスカト」の由来:地名に隠れた国際性
Ⅲ 政治と経済
第26章 オマーンの行政制度:国王に集中する権限と内閣の役割
第27章 王族とその政治権力:アール・サイードとブー・サイーディー
第28章 オマーンの部族:現代における部族の意味とは
第29章 遅れてきた産油国:油田開発と経済・社会の発展
第30章 選挙・議会制度改革の動き:進む上からの改革、盛り上がらぬ下からの政治参加
第31章 アラブの春に揺れるオマーン:「体制転換」ではなく「体制改革」を求める国民
第32章 オマーンの地政学的重要性:ホルムズ海峡封鎖危機とドゥクムの開発
第33章 オマーンの中庸外交:中立の模索と仲介外交の取り組み
第34章 ポスト・カーブース問題:「誰」が「どのように」継承するのか
第35章 海外資本を呼び込もう:不動産法改正の意図
第36章 日・オマーン関係:人物から見えてくる日本とオマーンの絆
第37章 脱石油依存への道:経済開発戦略
第38章 移民に支えられた経済活動:旧移民と新移民、インド系のプレゼンス
第39章 失業対策が動きだす:変わりゆく雇用制度と進まぬ自国民化
コラム3 国王による地方巡幸:オマーン政治の独自性
Ⅳ 宗教と民族、社会と文化
第40章 「オマーン人」の多様性:多民族国家オマーン
第41章 オマーンにおける宗教:多宗教の共存をめざして
第42章 オマーンの建築:建物からみる社会
第43章 オマーンの伝統衣装:インド、アフリカ、アラブの融合文化
第44章 オマーンの現代ファッション事情:イスラーム的におしゃれを楽しむ
第45章 ハリージーか、オマーニーか:ゆれるアイデンティティ
第46章 帰還移民:近代化を支えたアフリカ出身のオマーン人
第47章 農村の風景:変わりゆく姿
第48章 オマーンにおけるアラビア語:多言語社会とバラエティ豊かな方言の魅力
第49章 避けるでもなく、交わるでもなく:移民とオマーン人の微妙な関係
第50章 変わりゆく教育制度:オマーンの宗教、文化に根ざしつつ、グローバル化対応へ
第51章 オマーンの結婚式:暮らしの中の祝いの風景
第52章 家族生活:妻は夫のために美しく、そして強く
第53章 オマーンの食文化:インドとアフリカの影響を受けたアラブ料理
第54章 スークとショッピングモール:伝統はどこに向かうのか?
第55章 オマーンの未来:変わるオマーン、変わらないオマーン
コラム4 変わりゆくオマーン:オマーン独自の道を行け