中東かわら版

№6 イスラエル:国民の停戦への不満とレバノン攻撃継続支持が明らかに

 『The Jerusalem Post』紙は、2026年4月9日と10日に、停戦後に実施された世論調査を掲載した。それによれば、イスラエル国民の63%が、2月28日より始まったイランとの戦争の結果に不満を示した。さらに、イスラエル・米国がイランとの戦争に勝利したと答えたのは、ネタニヤフ政権支持層で47%、野党支持層で10%であり、全体ではわずか22%であった。なお、政権支持層の32%は判断するには時期尚早だと回答した。また、イスラエルが目的を達成するまで、ヒズブッラーに対して軍事作戦を継続することを支持する人の割合は77%に達した。

 同世論調査における議席予測では、前回と変わらず連立政権が49議席に対し、野党連合が61議席で過半数を維持した。またベネット元首相が率いるベネット2026党が24議席まで伸ばし、ネタニヤフ首相が率いるリクード党の25議席に迫り、議会第一党を伺う情勢となった。

 他方、『The Times of Israel』紙が4月10日に掲載した世論調査では、リクード党の議席は28から25に減少し、連立政権全体で2議席減となる51議席となった。これに対し野党連合は議席数を伸ばし、過半数の61議席に迫る59議席となった。

 さらに同紙は、複数の世論調査を掲載し、イランとの停戦に反対する人の割合が51~56%、支持する人の割合が25~32%で、いずれの調査でも停戦支持は少数にとどまったことを示した。一方、同紙が掲載した世論調査の一つでは、レバノンへの攻撃継続を支持する人の割合は79%に達した。   

評価 

 ベネット元首相は、今般のイランとの戦争の目的は、「核開発計画およびミサイル、地域におけるテロ活動の完全かつ恒久的な排除」、そして「濃縮ウラン460キログラムのイラン領土外への搬出」にあったと主張している。米国・イラン間で2週間の停戦が発表された4月8日の時点では、これらの目標はいずれも達成されていなかった。さらに同氏は、停戦合意に際し、イスラエルは「より復讐心に燃え、より決意を固めたイラン」と対峙することになると警告した。2月28日の攻撃開始以降、イランおよびヒズブッラーの反撃を受けたことで、イスラエル国民の間では、イランおよび親イラン組織の脅威がなお残存しているとの認識が強まったとみられる。こうした中、中途半端な停戦はかえってイスラエルをより危険な状況に置くとの危機感が、今般の一連の世論調査の結果につながった可能性がある。

 他方、議席の増減を見る限り、今般の停戦合意を受けても、報道時点では大きな「ネタニヤフ政権離れ」は生じていない。『The Jerusalem Post』の世論調査に従えば、戦争の結果に厳しい見方を示したのは主として野党支持層であり、このことが連立政権の大幅な議席減につながっていない要因の一つであるとみられる。しかし、連立与党支持層の32%が、今般の戦争に勝利したかどうかについて「判断するにはまだ早い」と回答しており、ネタニヤフ首相には政権離れを防ぐため、こうした留保的な支持層を意識した政策運営が求められていると言える。

 今般の戦争が始まる前には、今年度予算とネタニヤフ首相自身の汚職裁判が、ネタニヤフ首相の直面する課題となっていた。予算案に関しては、予算成立の障害となっていたユダヤ教超正統派の徴兵法案に関する議論を、戦時下であることを理由にいったん脇へと追いやる形で、政権は3月30日に予算を成立させている。一方、ネタニヤフ首相の汚職裁判は、イランとの戦争に伴う非常体制の下で中断されていたが、非常体制の解除を受けて近日中に再開される予定であると報じられた。審理再開の具体的な日程に関しては流動的となっているが、米国のトランプ大統領はイスラエルのヘルツォグ大統領に、ネタニヤフ首相の「恩赦」を求めており、裁判が長引けば、恩赦論が再燃する余地もある。

 レバノンへの攻撃継続は、世論調査では国民の強い支持を得ており、またイスラエルの脅威を取り除くことを目的としたイランへの再攻撃も、少なくとも一部の政権支持層からは肯定的に受け止められる可能性がある。さらに、イランやヒズブッラーとの戦闘が再び激化すれば、裁判日程の再調整を招く可能性もあり、結果としてネタニヤフ首相にとって政治的な猶予をもたらす展開となり得る。以上の点を踏まえれば、政治的求心力と政権の維持を図るうえで、ネタニヤフ首相が対イラン強硬姿勢を維持する可能性は十分にあるだろう。

【参考】

イスラエル:攻撃支持の一方で伸び悩む議席数」『中東かわら版』2025年度No.137。

(主任研究員 平 寛多朗)

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