№54 ヨルダン:強まるムスリム同胞団の活動規制
8月26日、出所不明の不正な資金を受け取っていた容疑で、ウィサーム・ラビーハート議員が検察に出頭を命じられた。同議員は、ムスリム同胞団を支持母体として設立されたイスラーム行動戦線(IAF)に所属している。
2025年4月23日、ファラーヤ内相はヨルダンのムスリム同胞団を即時非合法化すると発表した。それ以来、政権は同胞団の活動に対する制限を強化してきた。
その一環として、「ムスリム同胞団解体委員会」が社会開発省内に設置された。同委員会は5月14日に、非合法組織である同胞団が動産・不動産を名義貸しによって所有しているとして、名義人に警告を発した。さらに同月21日、同委員会は、名義貸しを行っている者について、1か月以内に状況を是正しなければ罪に問われる可能性があると述べた。
翌6月には、実際に法的手続きが取られ始めた。同月4日、社会開発省は、同胞団とIAFが共有する不動産を差し押さえた。14日には政府系メディアが、未申告の不動産・預金等を隠匿・不正保持した関係者たちが検察に書類送検されたと報じた。また捜査の中で、およそ17万JD(約3500万円)相当の銀行口座が確認されたと発表された。
7月以降も状況は同じである。同月9日、当局は同胞団の影響下にあると思われる協会や不法に寄付を集めた個人たちに法的措置を講じていると述べた。15日、関係当局は同胞団が国内外で違法な金融活動に従事していたと発表した。そして捜査の結果、同胞団は無認可の団体が集めた寄付金などを資金としており、その中にはガザ関連の寄付金もあったと述べた。31日には同胞団の資産を隠匿した人物たちの召喚を始めた。また8月には、同胞団に結びつく会合を開いたとした数名が逮捕起訴されている。
さらに、IAF所属の議員も拘束されている。7月4日、アカバの治安当局は、同胞団に関連する事務所から秘密裏に文書を持ち出そうとした容疑で、IAF所属の国会議員に出頭を要請した。7月17日には、IAF所属のヤナール・ファライハート議員が同胞団への支持をソーシャルメディアで表明したことで、検察に出頭を命じられている。
評価
5月以降、ヨルダン当局はムスリム同胞団の活動の場と資金源を断つことで、その活動を抑制しようとしている。法的には同胞団は1953年に「解散」しており、2020年にも裁判所から解散命令が出されている。そのため、同胞団名義では物件を借りることも資金を集めることもできなかった。活動を継続するためには「別名義」が必要であり、当局はその「別名義」と同胞団のつながりを、法的な枠組みの中で断とうとしている。
また、同時に同胞団とIAFのつながりも断とうとしていることがうかがえる。7月4日にIAF所属の議員がアカバの事務所から文書を持ち去ろうとした事案では、その後の捜索で同胞団に関係する人物が事務所を借り、議員の活動のために貸していたことが分かった。この事務所は独立選挙委員会に未申告のものであった。これに関連して、独立選挙委員会は、7月6日、IAFに対し、政党法違反を通告する覚書を送付し、60日以内に違反を是正しなければ法的訴追を受けると通告している。8月26日の不正資金の授受の事案と併せて考えれば、当局がIAFに対し同胞団と繋がる施設や資金の使用を断つよう圧力をかけていると言える。
一方で、政府系のメディアが報じるニュースを見る限りは、IAF所属議員の活動そのものを抑制する方向には動いていない。文書持ち出しで出頭を命じられた議員も、同胞団への支持をソーシャルメディアで表明した議員も数日で釈放されている。8月26日に出頭した議員に関しては、3か月以上の懲役が科される可能性があり、続報が待たれる状況にある。しかしIAF所属議員は31人おり、他の議員については、これまで政府系メディアで特段の報道はなされていない。
このことは、イスラーム的価値観に軸を置いた政治活動を否定しているわけではなく、同胞団の活動をヨルダン政府は拒絶しているということを意味するであろう。同胞団は、パレスチナのハマースとの連帯を隠さず、イスラエルへの対応をめぐり王制批判を行ってきた。IAFがそのような同胞団とのつながりを完全に断ち、イスラーム系の政治政党として生まれ変わるのなら、その活動の継続が認められると考えられる。
選挙委員会から違反を通告する覚書が送付されてから、まもなく期限の60日が経過する。法的訴追を受けるかどうかは、IAFの今後の活動を左右する重要な試金石となる。
(研究員 平 寛多朗)
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