№53 ヨルダン:ウラン商業化を見据えた中央アジア外交
2025年8月以降、100万人の雇用創出を目指すヨルダンの経済成長国家戦略である、「経済近代化ヴィジョン」の第2期(2026〜2029年)に向けた実行計画の策定が進んでいる。
そのような中、中央アジアとの関係を強化する動きがヨルダンで見られた。11日、ウズベキスタンの投資産業貿易相がヨルダンを訪問し、ヨルダンのクダー産業・貿易・供給相、アブー・ガザーラ投資相、ヨルダン商工会議所のジャグビール会頭らとそれぞれ会談した。26日には、アブドッラー2世国王がウズベキスタンを訪問し、同国の大統領と会談を行った。その後、両国のパートナーシップ拡大に関する共同声明が発表された。
翌日27日、国王はカザフスタンを訪問し、カザフスタン―ヨルダン・ビジネスフォーラムに同国大統領と参加した。国王は同フォーラムで、両国の経済協力を強化する重要性を指摘し、同国大統領との会談でも二国間関係強化と様々な分野における協力促進について協議した。またこの訪問中、ヨルダンで取れるウランの抽出可能性と濃縮利用の潜在性を評価する調査が2026年まで行われ、結果が良好であれば、カザフスタンが70%、ヨルダンが30%出資する合弁会社が同年末までに設立されるとカザフスタン側から発表があった。
評価
今般のウズベキスタン、カザフスタンとの関係強化の背景には、現在整備が進む中国、中央アジア、欧州を結ぶアジアカスピ海横断輸送ルート(TITR)の存在がある。ヨルダンは、シリア経由でトルコ南部のメルスィンに接続し、TITRを通じて欧州・中国市場に至る構想を描く。TITRの中央アジアにおける玄関口はカザフスタンであり、その隣国であるウズベキスタンもTITRと結ばれている。またウズベキスタンはキルギス経由の鉄道で中国との接続が計画されている。現状では本格稼働前だが、将来的に両国が回廊の中核となるとの見方から、ヨルダンは拠点確保を狙っている。
こうしたことを背景に、新市場開拓への期待を政府系メディアは報じているが、今般の両国との関係強化の実質的な狙いはウラン資源の商業化であろう。ヨルダンには推定6万2千トン(現在の価格で約63億ドル相当)のウラン資源が存在するとされる。低品位で経済性が低いとされる非在来型ウランに関しては、9万3千トン保有しているとみられる。
2007年以降、ヨルダンは原子力発電所を国内に建設することを目指してきた。これは国内ウランの活用により、電力不足を補い、同時にその電力を使い淡水化プラントを稼働させることを目的としていた。原発は電力・水不足を解決する手段として期待され、2016年の建設が計画されたが資金面を始めとする様々な問題により計画はとん挫した。現在は小型モジュール炉(SMR)の建設が目指されているが、その実現には依然として見通しが立っていない。
一方で、2022年にはウラン鉱石を製錬した粉末状の「イエローケーキ」の試験的製造を始めている。また2019年以降には、甲状腺がんの治療に用いられるウラン由来のヨウ素131の生成を行っているとメディアが度々報じている。
今般、ヨルダンと二国間関係強化が図られたカザフスタンは世界最大のウラン生産国であり、ウズベキスタンも世界における主要なウラン生産国である。そのため、ウランに関する技術やサプライヤーとしての知識、経験が蓄積されている。こうした状況を踏まえれば、ヨルダンの両国との連携は単なる市場の新規開拓だけではなく、ウランの商業化戦略の一環であると考えられる。
このようなヨルダンの経済戦略が収益に結びつくかは不透明である。しかし今般の国王のカザフスタン、ウズベキスタン訪問は、天然資源に乏しいヨルダンが資源の商業化と経済回廊の多角化という複数のオプションを通して経済発展を模索する姿を浮き彫りにしている。
(研究員 平 寛多朗)
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