中東かわら版

№91 イラン:ハーメネイー最高指導者が米国との「本質的」対立を指摘

 ハーメネイー最高指導者は「世界的高慢(エステクバール)との闘争国民記念日」、いわゆる米国大使館占拠事件の記念日の前日である11月3日、生徒・学生の前で演説を行った。演説の概要は、以下のとおり。

●コーランを毎日読むべきである。この困難な時代にあって、我らが若者は、内面から、宗教的に、信仰の観点から強固である場合に、言葉の真の意味で、「米国に死を」を口にすることができる。心が神とともにある若者、神とつながっている若者こそ、現代のファラオたちの権力と脅迫の言葉に立ち向かうことができる。

●大学生等による米国大使館占拠事件の起きた日は、未来の歴史(的記憶)において、間違いなく国民にとっての誇り高き勝利の日となるであろう。世界中の政治家たちたちが恐れる権力に対して、我らが若者たちは勇気を出し、恐れを払いのけて、米国の大使館を襲撃した日なのである。

●ここで「エステクバール(高慢)」という言葉の意味を定義しなければならない。エステクバールは、コーランに見える言葉である。エステクバールとは、「自身に対して優越感を抱くこと」という意味である。もしある政府、ある人間、ある集団、あるごろつきが他者に対して優越感を抱き、他者を突き飛ばす権利を自らに与え、他者の死活的利益に手を伸ばし、他者に為すべきことを命じるならば、そのような「エステクバール」は悪しきことである。そしてかつては英国政府、現在は米国政府が、力強き政府を持たぬ他国、聡明な国民を持たぬ他国に10もの軍事基地を作り、彼らの石油を持ち出し、彼らの利益を持ち出し、地下資源を略奪している。これが「エステクバール」である。

●「なぜ大使館を占拠したのか。我々が米国との間で抱えている問題は、ここに始まるというのに」と言う人たちがいる。私のみるところ、この議論は正しいものとは言えない。なぜなら、第一に我々が米国との間で抱えている問題は、(米国大使館占拠事件ではなく)米国によるモサッデグ政権転覆クーデターにさかのぼるからである。第二に、米国大使館占拠事件は革命に対する陰謀を暴き出したからである。米国は革命のことが我慢ならなかった。なぜなら、革命は米国が持つ比類なき甘美な獲物を米国の喉元から取り上げたからである。そこで米国による陰謀が始まったのである。

●米国のエステクバールな本質は、独立を希求する革命の本質とは水と油である。イスラーム共和国と米国の対立は、戦術的な対立ではなく、本質的な対立なのである。

●米国とは永遠に関係を持てないのかと問う者もいる。米国のエステクバールな本質は、服従以外、何ものも受け入れないところにある。米国の歴代の大統領は皆、口には出さないが、これを欲している。ただし、現大統領(注:トランプ大統領)は口に出している。彼は「イランは服従すべし」と言ったことがある。この発言は、実際のところ米国の本音から出たものである。

●我々は、遠い将来のことを予測することはできない。しかし、現在のところ、多くの諸問題の解決策は「強くなること」であるということは、周知のとおりである。

●米国はときどき、イランと協力したいなどと言ってくる。イランとの協力と、呪われしシオニスト体制との協力・支援は調和できない。もし仮にシオニスト体制への支援を完全にやめ、軍事基地をここから撤収させ、この地域への介入をやめれば、その時には問題(注:米国との協力・和解)を検討することも可能である。これは現在に属することでも、近い将来に属することでもない。

評価 

 ハーメネイー最高指導者は9月23日の演説で米国との交渉の可能性を否定していたが、今回の演説でも、米国の「エステクバールな本質」はイスラーム共和国の「独立を希求する本質」と交わることはなく、米国とイスラーム共和国の対立は「本質的」であると述べて、近い将来における関係改善の可能性を完全に拒絶した。10月12日に、穏健保守派の重鎮で、ハーメネイー最高指導者に近い人物と考えられてきたナーテグヌーリー師が米国大使館占拠事件を「大きな間違い」と述べたが、米国との関係改善を求める国内の一部の声を封じたことになる。

 米国の本質であるという「エステクバール」は、ハーメネイー師も指摘するように、コーランで悪魔イブリースの属性として語られる性質である。コーラン第38章ほかで、神が自らの創造した人間にひれ伏すよう天使たちに命じたところ、イブリースだけが「高慢」にもそれを拒否した話が語られている。悪魔と同様の性質を有した米国との対話、ましてや和解は当面、不可能であろう。

【参考】

イラン:ハーメネイー最高指導者が米国との交渉の可能性を否定」『中東かわら版』No.60。

(主任研究員 斎藤 正道)

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