№81 イエメン:サナアでの国連職員らの一時拘束
- 2025イエメン湾岸・アラビア半島地域
- 公開日:2025/10/21
2025年10月19日、イエメンの首都サナアで国連機関が入居する建物がアンサール・アッラー(蔑称:フーシー派など)の要員の捜索を受け、外国人を含む職員20人以上が一時拘束された。アンサール・アッラーは、2014年秋以降サナアを含むイエメン北部を実効支配し正統な政府を自任しているが、国際的な承認を得ていない。今般、同派は18日から国連機関の現地職員の拘束や取り調べを始めている。アンサール・アッラーは捜索の嫌疑をスパイ行為と発表したが、国連は国連要員・機関が人道援助以外の活動に関与しているとの主張を強く否定した。その後、20日午後の時点で職員らは解放された。国連の発表によると、職員らに対し「国連施設群内部での行動の自由」が認められた。
評価
イエメン、特にアンサール・アッラーの制圧下の地域は、長年深刻な人道危機に見舞われている。しかし、人口の大半が緊急の支援を必要とし「今世紀最悪の人道危機」と形容されることも多かった状況に対し、資金の調達を含む援助活動が十分とは言えない状況が続いてきた。アンサール・アッラー側は、2023年末から度々アメリカ、イギリス、イスラエルによる攻撃を受けていることへの意趣返しや不満の表明として制圧地での国連機関の活動を圧迫している。これらの動きは、2023年10月7日のハマースによる対イスラエル攻撃「アクサーの大洪水」作戦以来の、アンサール・アッラーによるイスラエルへのミサイル・無人機攻撃とイエメン周辺を航行する船舶への攻撃という国際紛争の中で発生したものである。このため、問題の根本的な解決にはイエメン紛争も含めた地域の紛争・緊張への包括的な対処が不可欠といえる。しかし、イエメン紛争の解決に向けた国際的気運は低調で、そうした中で国連機関への圧迫が続くことは、国連機関の職員の安全を脅かすだけでなくイエメン人民への支援を一層遠ざける結果になるだろう。
(特任研究員 髙岡 豊)
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