№71 アフガニスタン:パキスタン・ターリバーン運動(TTP)の指導者が殺害か
一部報道によると、2025年10月9日夜、アフガニスタン・カーブルでの爆撃により、「パキスタン・ターリバーン運動(TTP)」の指導者ヌール・ワリー・マフスード氏が殺害された。同氏はTTPを2018年から率いてきた。アフガニスタン・ターリバーン政権のムジャーヒド報道官はカーブルで爆発音があったことを認めたが、日本時間11時現在、爆撃による被害に関するターリバーン政権からの発表はない。現地住民の証言によると、飛行体の飛行音がし、その後2度、大きな爆発音が聞こえた由。
日本時間11時現在、この爆撃への関与を認めた人物・団体はないが、パキスタンのアーシフ国防相は9日のパキスタン議会での演説で、どこにいようともテロの促進者の行方を追うと述べたうえで、「我々の忍耐にも限界がある。テロリストを匿い、あるいは促進する者たちは、パキスタンにいようとアフガニスタンにいようと、(重大な)結果に直面するだろう」と警告していた。同相はさらに、2023年2月のアフガニスタン訪問で、同国からのテロリストによる越境攻撃の問題についてターリバーン政権に指摘したものの、同政権からは曖昧な反応しかなかったことを明らかにした。
評価
パキスタンでは近年、テロ被害が深刻化している。パキスタンのシンクタンク「安全保障研究所」(CRSS)によると、西暦2025年に入ってすでに2414名がテロの犠牲になっており、昨年の死者数2546名を上回るペースとなっている。特に2025年7~9月の3カ月間だけで901名が死亡し、4~6月比で46%増加したとされ、そのうち71%(638名)は、アフガニスタンと国境を接するハイバル・パクトゥンフワ州で起きたテロによるものだという。
こうした事態を受け、パキスタンは10月7日、同州で武装勢力の掃討作戦を実施し、19名の「テロリスト」を殺害したが、パキスタン軍側も交戦で将校2名を含む11名の犠牲者を出している。カーブルで爆撃があった前日の8日にも、同州の別の地域でパキスタン軍と武装勢力間で交戦があり、武装勢力側で7名、軍側で1名が死亡している。
TTP指導者が殺害されたと一部で報じられている9日夜のカーブルで起きた爆撃がパキスタンによるものだとすれば、それはTTP対策に本腰を入れるよう求めるパキスタンからターリバーン政権に対する警告だったと言えるだろう。
他方、カーブルでの爆撃はターリバーン政権のモッタキー外相代行のインド訪問中に行われていることから、ターリバーン政権とインドの関係強化に対する懸念を表現したものとの見方も、一部からは出ている。
モッタキー外相代行は5日間の日程で行われるインド訪問で、同国に対してターリバーン政権の承認、外交レベルの引き上げ、アフガニスタンの人道支援及びインフラ整備への協力を求めることが予想されおり、ロシアが2025年7月にターリバーン政権を承認したことに倣い、インドもターリバーン政権を承認する可能性が取り沙汰されている。
【参考】
「アフガニスタン:パキスタン国防相がカーブルを訪問しテロ対策について協議」『中東かわら版』2022年度No.149、2023年2月24日。
(主任研究員 斎藤 正道)
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