中東かわら版

№61 イスラエル:ネタニヤフ首相の国連総会での演説

 2025年9月26日、ネタニヤフ首相は国連総会で概要以下の通り演説した。

 

●イランは核兵器とミサイルでイスラエル、米国、世界中の国々を脅かしていた。このためイスラエルはハマース、ヒズブッラー、シリア(※アサド政権)、アンサールッラー(フーシー派)といった親イラン勢力の軍事力の大部分を破壊した。

●しかしまだ終わりではない。ハマースせん滅という任務を完遂しなければならない。(ここから演説内容がガザ地区で放送される)ハマースは武装解除して人質を解放せよ、そうすれば生き延びることもできよう。以上の要求をハマースが受け入れれば戦争は直ちに終わる。

●公にはイスラエルを批判する世界の指導者も、内心イスラエルに感謝している。イラン攻撃の際、ドイツのメルツ首相が「イスラエルは我々全員のために汚れ仕事をしている」と述べた通りだ。

●イスラエルは二国家解決の可能性を信じている。信じていないのはパレスチナだ。彼らは二国家の共存ではなくイスラエルの消滅を望んでいる。ハマースだけでなくパレスチナ自治政府もテロリストを支援してきた。同政府は根底から腐敗している。

●西側諸国の指導者がテロ国家を押し付けようとしていることをイスラエルは許さない。パレスチナ国家を認めることはイスラエルにとって国家的自殺である。

●以上はイスラエルの総意である。先日の議会の投票でパレスチナ国家の樹立に賛成したのは議員120人の内わずか9人である。極右政党だけが望んでいるわけではない。

 

評価

 演説は10.7以後の軍事行動を正当化するもので、これまでの論調と大筋は変わりない。一方で今回の演説は、西側諸国を中心とするパレスチナ国家承認の流れを受けたものとして重要な意味を持っていた。ネタニヤフ首相はガザ地区壊滅やヨルダン川西岸地区併合といった、国際社会が「極端」と見なす計画案を打ち出しながら、フランス・英国・カナダがパレスチナ国家承認を見送ることを期待してきたが、これに失敗したことが以上のような批判として現れたといえる。

 「アラブの春」以降の中東諸国と米国との間の隙間風を背景に、欧州諸国は中東、特に湾岸諸国との関係強化に努めてきた。経済・軍事分野に加え、ウクライナ戦争以降はエネルギー分野でも関係強化を進めてきた。各国としては、米国のように過剰なイスラエル支持を表明することで中東諸国との関係を悪化させたくないとの思惑がある。パレスチナ国家承認は、こうしたバランス外交の一環として評価できよう。

 言い換えれば、国家承認が実質的な効果を持つかどうかは不透明である。現実問題として、ガザ地区が存続するか、パレスチナ国家が樹立されるか、西岸地区が併合されるかどうかはイスラエルの動向にかかっている。したがって最終的に米国のイスラエルに対する説得や圧力が必要になるが、国家承認が進むことでイスラエルが強硬化しているのが現状だ。

(研究主幹 高尾 賢一郎)

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