№51 イラン:IAEAとの協力再開の可能性
- 2025湾岸・アラビア半島地域イラン
- 公開日:2025/08/28
2025年8月26日、グロッシIAEA事務局長は、IAEAの査察官がイランに戻り、査察活動を再開するところだと述べた。イランとの間で何らかの合意が結ばれたのかどうかについては、言及しなかった。
イラン関連の報道を伝えるニュースサイトのAmwaj.mediaも26日付の報道で、イラン高官の話として、イランとIAEAとの間で交渉が続けられており、最終合意に近づいていると報じている。
評価
イランはイスラエルとの停戦直後の6月下旬、グロッシ事務局長がイラン核問題に関して公正さを欠いた報告書を出し、イスラエルによる対イラン攻撃を誘発したとして、「IAEAとの協力停止法」をスピード成立させた。これにより、IAEAの査察官らはイランを出国し、同国でのIAEAによる査察活動は停止状態に追い込まれていたが、今回のグロッシ事務局長の発言が正しければ、イランとIAEAの協力が再開することになる。
核合意(JCPOA)の参加国である英仏独3カ国は、イランが8月末までにIAEAとの協力を回復させ、米国との核交渉を再開させない限り、国連安保理決議第2231号に基づき、対イラン国連安保理制裁を再適用させる「スナップバック」の手続きに入ると警告しており、8月26日にはスイス・ジュネーブで、イランと英仏独3カ国の外務次官級会合が開かれていた。イランとIAEAの協力再開は、もし実現されれば、国連安保理制裁の再適用をギリギリのところで回避するために、イラン側が譲歩したことを示している。
「IAEAとの協力停止法」では、国家安全保障最高評議会(SNSC)がIAEAとの協力再開の是非を判断する機関となっており、核問題で枢要な位置を占めている。8月5日、ペゼシュキヤーン大統領はアフマディヤーン氏に代えて、アリー・ラーリージャーニー最高指導者顧問をSNSCの新たな書記に任命し、ハーメネイー最高指導者も7日、同氏をSNSC内における自身の名代に任命したが、これは国際協調派のラーリージャーニー氏の登用によって、IAEAとの関係修復をスムーズに進めるためのものだったと考えられる。
こうした流れに対し、イラン国内の対外強硬派も反発を強めている。ラーリージャーニー氏がペゼシュキヤーン大統領からSNSCの新たな書紀に任命されて数時間後、同じSNSCで最高指導者名代をともに務め、強硬保守派のリーダー的存在であるジャリーリー氏はXへの投稿で、イスラエルの民はエジプトのファラオに勝ったにもかかわらず、モーセがシナイ山こもっている間に偶像崇拝に堕していったとの聖書及びコーランの話になぞらえて、イスラエルとの戦争に「勝利」したにもかかわらず、一部の者は「敵」との「交渉」を口にしていると非難した。
また、10日にペゼシュキヤーン大統領が(米国との)「話し合い」を「恐れている」者に対し、「では何をしたいのか。戦争がしたいのか?」と批判したことに対し、強硬保守派のラサーイー国会議員は、イランの弱みを見せて敵の侵略を誘発する発言であり、「大統領としての政治的適格性を欠く」として、同大統領の解任を主張した。
26日には、国会安保外交委員会は、グロッシIAEA事務局長は「米国とシオニスト体制の走狗」であるとして、イラン外務省及び原子力庁に対して「IAEAとの協力停止法」を厳格に守るよう、そしてIAEAとの協力によって米国・イスラエルによる対イラン再攻撃のお膳立てをしないよう求める声明を発表して、政府を牽制している。
なお、ハーメネイー最高指導者は24日、第8代イマーム・レザーの殉教記念日に行った演説で、米国との直接交渉を主張する者たちの議論は「表層的」だとし、米国はイランが自らの命令に素直に耳を傾けることを求めているのであって、同国との問題は「解決不能」と述べた。ラーリージャーニー氏のSNSC書記登用に同意したハーメネイー師が、IAEAとの関係や対米交渉にいかなる判断を下すかが注目される。
(主任研究員 斎藤 正道)
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