中東かわら版

№46 リビア:ハフタルが息子サッダームをLNA副司令官に任命

 2025年8月11日、リビア東部勢力の主要人物であるハフタル・リビア国民軍(LNA)総司令官は、息子のサッダームをLNA副司令官に任命した。ハフタルは、この任命はLNAの軍事力強化と能力向上を目指す「2030年ビジョン」に沿ったものであると説明した。また、ハフタルと連携する東部政府のハンマード首相やサーリフ代表議会(HOR)議長も、サッダームの副司令官就任を歓迎した。

 1991年にベンガジで生まれたサッダームは、ハフタルの息子の中で末子にあたる。2016年にLNA傘下の「ターリク・イブン・ジヤード旅団」司令官に就任し、2024年8月にはLNA陸軍司令官に任命された。

 

評価

 サッダームのLNA副司令官就任は、今年82歳を迎えるハフタルが将来的に総司令官ポストを彼に引き継ぐことを視野に入れた人事であると言える。ハフタルの別の息子としては、LNA保安部隊司令官のハーリドや、リビア開発復興基金長官のベルガーシムも存在感を示してきた。こうした中、サッダームは軍事部門でのキャリアに加え、外交面での経験も評価されたと考えられる。特に、東部勢力が長年対立してきたトルコとの関係構築が注目され、今年4月にはアンカラを訪問してギュレル国防相やバイラクタルオール陸軍司令官と会談し、さらに7月にもイスタンブルでギュレル国防相と面会した。ハフタル自身、今後のリビア統治を見据えた際、トルコの影響力を無視できず、むしろ一定の関係を維持する方に利点を見出しているとみられる。

 ただ、今後ハフタルからサッダームへの権限移譲が進む中で、東部勢力の結束を維持できるかは不透明だ。ハフタルは2014年5月、イスラーム主義勢力掃討作戦を開始し、同作戦に賛同する民兵や諸部族を糾合しつつ支配領域を拡大してきた。しかし、彼の統率力が失われれば、東部勢力が一枚岩ではなくなり、分裂に至る可能性もあるだろう。

(主任研究員 高橋 雅英)

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