№100 UAE:イスラエル・モルドバ二重国籍のユダヤ聖職者の殺害
- 2024湾岸・アラビア半島地域アラブ首長国連邦
- 公開日:2024/11/25
2024年11月23日、UAEでイスラエル・モルドバの二重国籍のラビ(ユダヤ聖職者)、ツヴィ・コガン氏がアル・アイン市で遺体で発見されたことを、UAE治安当局の情報に基づいてイスラエル首相府が発表した。コガン氏(28歳)は、ハバッド(※)の宣教師として2020年末以来UAEに居住し、同地のユダヤ教徒の信仰サポート等を、UAE首席ラビのリーバイ・ダックマン氏とともに行い、その一環で2022年12月、ドバイにUAE初となるコーシェル食料品店(Rimon Market)を開店した。コガン氏は21日にドバイで行方不明となっていた。訃報翌日の24日、UAE内務省はコガン氏殺害の容疑で3人を逮捕したと発表した。容疑者の素性等については明かされていない。
なお以上を受けて、イスラエル当局は自国民にUAEへの不要不急の渡航を控えるよう改めて勧告し、UAEに滞在中の自国民に対しても移動を最小限に抑え、イスラエルないしユダヤに関連する場所を訪問するのを控えるよう呼びかけた。
※ハバッド・ルバビッチ(Chabad-Lubavitch)
18世紀頃にガリツィア地方(ポーランド・ウクライナ間)で起こったユダヤ教敬虔主義の運動に源流を持つグループで、20世紀に拠点を米国に移して活動。今日、世界100カ国以上に夫婦や家族を派遣し、現地のユダヤ教徒の信仰実践をサポートする宣教活動に従事。東京ではイスラエル大使館と連携し、2016年から積極的に活動。
評価
2020年9月のUAE・イスラエルとの国交正常化を経て、UAEのユダヤ教徒コミュニティは成長を続け、イスラエル国籍を持つビジネスパーソンがゴールデンビザ(外国人高額納税者等に対する長期滞在許可)を取得するなど、「ユダヤ・イスラエル」は疑いなくUAE経済に組み込まれてきた。だからこそ、当局はガザ戦争の余波として国内のユダヤ教徒・イスラエル国籍保有者が標的になる事態を警戒し、実際彼らに対して、安息日礼拝のために集まることを無期限延期とする要請を発出したと言われる(アブダビのAbrahamic Family House内のシナゴーグは別だが、礼拝時は警備が敷かれる)。UAEとしては、これまでほぼ対岸の火事であったガザ危機の影響が、自国の経済成長のマイナス要因として及ぶ事態はなんとしても避けたく、本件に対して迅速かつ厳正な対応を行うだろう。なお一部のメディアでは、コガン氏殺害をイランの陰謀とする情報も見られるが、イラン側はこれについて否定している。
(研究主幹 高尾 賢一郎)
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