№66 カタル・クウェイト:クウェイトへのカタル産LNGの供給契約
- 2024湾岸・アラビア半島地域カタルクウェイト
- 公開日:2024/08/28
2024年8月26日、カタルエナジーは、クウェイトへの年間最大300万トンの液化天然ガス(LNG)供給に関する15年間の売買契約をクウェイト石油公社(KPC)と締結した。同契約に基づき、2025年1月よりカタル産LNGがクウェイト南部のズールLNG輸入施設に輸送される。両社は2020年にも、2022~37年に年間300万トンのカタル産LNGをクウェイトに輸出する契約を締結した。2件目となる今次契約は、両国間のエネルギー協力を更に促進するものとなる。
評価
今回のLNG供給契約は、カタルとクウェイトの両国にとって重要な意味を持つ。まず、カタル側は、最大の財政収入源である天然ガスの輸出量を増やすことができる。カタルは現在進めているLNG増産計画(現在比プラス84%)で、追加生産量の全てを売りさばくことができていない。また、過去に締結したLNG売買契約の更新に際し、各国の一部企業は、カタルが求める長期契約や供給量の維持・増加に難色を示している。こうした中、カタルがクウェイトと新たな大口のLNG輸出契約を結べたことは、ガス収入を維持する上で大きな成果と言える。
一方、クウェイト側は急増する電力需要に対応するため、今次契約を通じて発電用ガスを追加調達することが可能となる。クウェイトはこの数年、発電用燃料を重油から、より低炭素の天然ガスに切り替えているため、発電比率(2021年時)に占めるガス火力発電の割合(56%)は石油火力発電(44%)を上回る。こうした状況下、今年6月に熱波に伴う電気使用量の急増で大規模停電が発生し、その後も計画停電を余儀なくされた。電力供給の不足は基幹産業の石油部門の低迷につながる恐れがあることから、クウェイトは発電量の拡大に向け、多くのガスを輸入する必要に迫られている。今後、近隣国カタルからLNGを安定的に輸入できることは、クウェイトの電力不足問題の解決に寄与すると考えられる。
(主任研究員 高橋 雅英)
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