中東かわら版

№46 モロッコ:第2回ネゲヴ・サミット中止に関する報道

 2023年6月20日、『タイムズ・オブ・イスラエル』紙はアメリカ及びイスラエル外交筋の話を引用し、モロッコが7月に自国で開催予定であった第2回ネゲヴ・サミット閣僚会合の中止を決定したと報じた。ネゲヴ・サミットは、アメリカとイスラエルに加え、イスラエルと関係正常化したアラブ首長国連邦(UAE)、エジプト、バハレーン、モロッコの外相が集まる多国間会議である。第1回会合は2022年3月にイスラエル南部のネゲブ砂漠のスデ・ボケルで行われ、第2回会合は今年3月にモロッコで予定されていたが、パレスチナ情勢悪化を理由に、延期された。サミット中止の報道を受け、モロッコは現時点で反応を示していない。

 

評価

 モロッコとしては、2020年12月にイスラエルと関係正常化し、多方面で関係強化を図る中、ネゲブ・サミットを主催することで、イスラエルとの強固な関係を国内外にアピールする狙いがあった。しかし今般、モロッコがサミットを中止した理由は、イスラエルによるパレスチナ人への度重なる攻撃や入植地建設計画の進展を見過ごせなくなったからである。ムハンマド6世国王がイスラーム協力機構(OIC)のアル・コッズ(エルサレム)委員会の委員長を務め、国王自らがパレスチナ問題を西サハラと同じ程度の重要課題として捉えている。このため、パレスチナとの連帯に具体的な行動を示さず、親イスラエル政策を追求した場合、モロッコ国内の親パレスチナ勢力による批判の矛先が国王に向かう恐れがある。この先もパレスチナ情勢の緊迫化が続くとなれば、モロッコはパレスチナ問題を考慮し、イスラエルとの二国間協力の促進を控える可能性もあるだろう。

 

【参考】

「パレスチナ・イスラエル:ジェニンでの大規模交戦」『中東かわら版』No.44。

「モロッコ:モロッコでの軍事演習にイスラエルが初参加」『中東かわら版』No.37。

「イスラエル:アラブ諸国外相と多国間会談「ネゲブ・サミット」を開催」『中東かわら版』2021年度No.133。

白谷望「イスラエルとの国交正常化によるモロッコ国民の葛藤――自国の領土か、同胞との連帯か」『中東研究』第541号。 

(主任研究員 高橋 雅英)

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