中東かわら版

№128 サウジアラビア:習近平中国国家主席の訪問 #2

 2022年12月9日、リヤドで開催されたGCC・中国サミットとアラブ・中国サミットに、ムハンマド皇太子とサウジ訪問中の習近平中国国家主席が参加した。GCCからはファハド・サイード副首相(オマーン)、タミーム首長(カタル)、ミシュアル皇太子(クウェイト)、ハマド国王(バハレーン)、ハマド・シャルキー首長(UAE・フジャイラ首長国)、ハジュラフ事務局長が、GCC以外のアラブ諸国からはエジプトのシーシー大統領を筆頭に、イエメン、コモロ諸島、ジブチ、チュニジア、パレスチナ自治政府、モーリタニア、レバノン等からの代表者の他、アラブ連盟のアブルゲイト事務局長が出席した。

 2つのサミットを通して、中国が今後、GCC諸国に5つの重点的拠点を設け、3~5年(2023~2027年)のジョイントアクションプランに取り組むことが発表された。これにあたり、習国家主席は中国の市場規模やエネルギー需要の高さを、アジアを主たるエネルギー輸出先とするGCC諸国に改めてアピールした上で、GCC諸国に限らず、広くアラブ諸国とデジタル経済、宇宙開発、投資、脱炭素、治安分野等での関係強化を進めていくことが述べられた。この他、習国家主席は、中国が中東和平の二国家解決案を支持(パレスチナ人支援)するとの立場を強調した上で、自国を取り巻く環境については台湾独立への断固たる拒否と、その立場(「一つの中国」原則)への支持を呼びかけた。

 

評価

 中国の中東進出は、一帯一路政策に則った外交路線におけるトレンドの一つであり、今後さらなる強化に向かうことはほぼ間違いない。今般の2つのサミットでとりわけ重要なのは、これまで貿易を中心に実利主義を基本スタンスとしてきた中国の対中東諸国外交が、協力分野の拡大を志向するものとして強調されている点であろう。「あらゆる分野での関係強化を図る」とは外交における常套句であり、中国と中東諸国との間でもそれは見られたが、今般の中国とアラブ諸国、特にサウジとの協力分野拡大に向けたメッセージは、双方の具体的な需要を念頭に置いており、また中東諸国と米国との関係の冷え込みを前提としている点等から、そうしたリップサービスを超えたものと映る。中国からすれば、権力基盤が図られる一方で、体制批判の抗議運動、ゼロコロナ政策の緩和と経済回復、台湾情勢といった国内外の課題も目立つ状況下、中東諸国との関係強化という成果でそれから目を逸らしたい思惑もあるかもしれない。

 

【参考】

「サウジアラビア:習近平中国国家主席の訪問 #1」『中東かわら版』No.127

【特集:中国の中東進出】『中東研究』第537号、2020年1月

(研究員 高尾 賢一郎)

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