中東かわら版

№126 サウジアラビア:OPECプラスによる石油減産維持の思惑

 2022年12月4日、OPECプラスは、10月5日の会合で決定した11月以降の石油減産(日量200万バーレル)の方針について、当面これを継続することをオンライン閣僚会合において確認した。減産は10月に発表された通り、2023年末までが予定されている。なお前日3日にはG7・EU・オーストラリアが、ロシア産原油の輸入価格に対して現行より安い1バーレル60ドルという上限を設けることを発表している。

 

評価

 3日にG7・EU・オーストラリアが発表したロシア産原油価格の上限設定は、原油輸出によってロシアが利益を得ることを制限する、経済制裁の一環である。同陣営としては、これによってOPECプラスが原油増産を選択する流れに持ち込めれば理想だったと思われるが、OPECプラス側はこの挑発に応じず、現地アナリストらが「様子見」と評する現状維持を選んだ。

 とはいえ、これはOPECプラス、特にこの中軸を担うサウジアラビアによる、「ロシアを孤立させない」との一貫した外交姿勢に基づく積極的なアクションでもある。欧米諸国による経済制裁がロシアのウクライナ侵攻を止めさせることを目指しているとすれば、目下、その目的は全く果たされておらず、むしろサウジやUAEが繰り返してきた、(他国への侵略に反対することとは別に、)エネルギー市場の不安定化を恐れるならロシアを孤立させるべきではないとの主張が、エネルギー不足や物価高騰という形で欧州諸国に悪影響を及ぼしている。サウジとしては、欧米主導の「ロシア外し」に加わって、自国の原油生産の利益を目減りさせる状況をわざわざ後押しする理屈はない。

 加えてサウジとしては、ゼロコロナ政策の影響で中国における原油需要が回復しない中、増産に踏み切ることはメリットが少ない(サウジにとって中国は最大の輸出相手国。全体の約20%、原油輸出に限っては約26%を占める)。サウジにとって減産維持は、欧米諸国に対する単なる観測気球ではなく、基幹産業を守るための強いメッセージであることを見誤ってはならない。

 

【参考】

「サウジアラビア:米国における対サウジ強硬論の動き」『中東かわら版』No.99

「サウジアラビア・UAE:米国が武器売却を発表、イエメン戦争の停戦合意延長とOPECプラスの石油増産がこれに続く」『中東かわら版』No.64

(研究員 高尾 賢一郎)

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