中東かわら版

№117 アルジェリア:国内初のロシアとの軍事演習

 2022年11月16日、アルジェリアとロシアによる軍事演習が南西部ベシャール県で開始された。両国の軍事演習はこれまでロシア(2021年11月の北オセチア演習や2022年9月の極東演習)で行われてきたが、アルジェリア国内での実施は初となる。今次演習はテロ対策訓練が中心であり、今月28日まで行われる予定である。同演習には、アルジェリアとロシアの各特殊部隊員100人が参加している。

 

評価 

 2月のウクライナ侵攻以降、国際社会がロシア包囲網を強めるなか、アルジェリアはロシアとの関係を維持していく姿勢を崩していない。今般の演習は、イスラーム過激派の掃討を念頭としたテロ対策訓練であるが、演習地がモロッコ国境から約50kmの地点であることを踏まえると、アルジェリアが西サハラ問題で対立するモロッコを牽制する意味合いもあると言える。

 アルジェリア・ロシア関係で注目されるのは、12月に予定されるタブーン大統領のロシア訪問である。訪問日は未定であるが、大統領のロシア訪問時には、二国間関係の強化の一環として、2001年の戦略的パートナーシップ協定の更新や、ロシア製武器の大型購入契約の締結が予想される。武器購入に関して、アルジェリアは来年の国防予算を約230億ドル(2022年比プラス127%)まで引き上げる方針であることから、ロシアの最新型ステルス戦闘機「Su-75」の購入準備を進めていると見られる。

 アルジェリアが大規模な国防予算を編成できた背景には、資源収入の増加がある。2022年の石油・ガス輸出額は、COVID-19以前の2019年時(約331億)を上回り、500億ドル以上に達する見通しだ。資源価格が高水準で推移する中、10月より新たな油田及びガス田での生産活動が始まり、また欧州諸国がロシア産エネルギーの代替調達を目指し、アルジェリアの炭化水素部門への投資を活発化させたことで、今後も資源収入の拡大が期待できる。こうして、ウクライナ危機に伴う資源価格高騰とエネルギー供給国としての地位向上で得た資源収入の増収分を、アルジェリアはロシア製武器購入費に充て、ロシアとの友好関係の維持に努めている。

 他方、ロシア製武器の購入を続けるアルジェリアに対し、アメリカ議会の超党派グループは9月にブリンケン米国務長官に宛てた書簡で、「対敵対者制裁措置法(CAATSA)」の適用を要求するなど、アルジェリアのロシア寄りの姿勢を問題視する声が徐々に高まっている。

 

【参考情報】

<中東かわら版>

・「アルジェリア:ロシアでの軍事演習に参加」No.83(2022年9月7日)   

  

(研究員 高橋 雅英)

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