№104 アルジェリア:イタリア車「フィアット」の生産工場の設置
2022年10月13日、ゼグダール産業相と自動車グループ「ステランティス」のタバレスCEOは、西部オラン県のタフラーウィー工業地区でイタリア車「フィアット」の生産工場を設置することに合意した。現時点で、契約金額や目標生産台数などの詳細は明らかになっていないが、ゼグダール産業相は、2023年末までにミニバンやSUV車の生産が開始される見通しを示した。
評価
アルジェリアの自動車産業は2014年以降の度重なる法制度の変更や、ブーテフリカ政権関係者による汚職事件の発覚により、混乱が生じてきた。各社の活動に支障となった動きは、車両の安全基準の厳格化、新車の輸入割当制度の導入、現地生産の義務化、車両部品の輸入割当制度の導入、部品の現地調達率の引き上げ、である。また、ブーテフリカ大統領が退陣した2019年4月以後、脱ブーテフリカ政権化を図るための汚職調査が自動車産業を標的とし、自動車工場の誘致に関わった企業関係者や産業相が相次いで逮捕された。これらの影響により、韓国の現代自動車や起亜自動車、独フォルクスワーゲンの工場は閉鎖に追い込まれた。
自動車産業が低迷するなか、今般のイタリア車の工場設置は、アルジェリアにとって経済面と対イタリア関係で大きな意味を持つ。まず、増加する自動車需要に対して供給量が不足し、国内の自動車販売価格が高騰した結果、国民が容易に購入できない状況となった。政府は市場価格の適正化を目指し、外国企業による生産再開を待ち望んでいたことから、イタリア車の工場設置は、他の外国企業の活動再開にプラスの影響をもたらすだろう。次に、タブーン政権はエネルギー面に加え、自動車産業でもイタリアとの関係強化を図れることとなる。タブーン政権はイタリアのドラギ前政権と良好な関係にあり、メローニ新政権との関係維持を目指している。一方のイタリアにとっても、アルジェリア自動車産業への本格参入により、市場で存在感を示すフランス車やドイツ車からシェアを奪える利点がある。この点より、イタリア車の工場設置はアルジェリア・イタリア協力関係の象徴的な事業となると言える。
(研究員 高橋 雅英)
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