中東かわら版

№80 アルジェリア:マクロン仏大統領の訪問、二国間関係の強化へ

 2022年8月25~27日、フランスのマクロン大統領はアルジェリアを5年振りに訪問した。フランス代表団には、コロナ・ヨーロッパ・外務相、ルコルニュ軍事相、ル・メール経済・財務相、ダルマナン内相といったマクロン政権の主要閣僚をはじめ、仏企業関係者や軍・治安当局関係者も含まれた。

 マクロン大統領は滞在中、タブーン大統領と会談したほか、在アルジェリア・仏人コミュニティーを前に演説し、過去を振り返る重要性を強調し、アルジェリア植民地期に関する合同委員会を設置する考えを明らかにした。また両国間の今後の協力として、経済、文化、科学分野でのパートナーシップの強化や、サヘル地域の政情や過激派対策での連携を図っていく方針を打ち出した。そして、両国の大統領は保健や高等教育、科学研究、スポーツの分野で5つの協力協定に調印したほか、「新たなパートナーシップのためのアルジェ宣言」に署名するなど、二国間関係を強化していく姿勢を示した。

 エネルギー分野では、アルカーブ・エネルギー鉱業相とハッカール炭化水素公社(Sonatrach)総裁が、仏エネルギー企業「Engie」のマグレガーCEOと会談し、石油・ガス、電力、再生可能エネルギー分野でSonatrach・Engie間の協力を促進する点を確認した。

 安全保障分野では、両国の軍・治安当局関係者が歴史上初めて一堂に集結し、アルジェリア側はタブーン大統領(国防相兼務)とシェングリーハ参謀総長に加え、国内治安総局(DGSI)と対外治安・文書総局(DGDSE)の両局長、国家転覆対策担当事務局長が出席し、両国を取り巻く安全保障問題や軍事協力の促進方法について協議した。

 

評価

 アルジェリアがフランスから独立して60周年を迎えた中、マクロン大統領はアルジェリアを訪問し、二国間関係の強化を望む立場を明確に示した。両国関係は、昨年、マクロン大統領が過去のアルジェリア系移民への弾圧に関する慰霊祭に現職大統領で初めて参加した一方で謝罪しなかったことや、アルジェリアを含むマグリブ諸国に対してフランス向け査証を減数させたことなどを理由に、冷え込んでいた。

 こうしたなか、マクロン大統領がアルジェリアに歩み寄った理由として、アルジェリア産ガスの追加調達と、サヘル情勢に対応するための協力体制の構築が挙げられる。ウクライナ危機を受け、フランスはエネルギー面で脱ロシア依存(ガス依存度:全体の17%)を目指しており、原子力発電の不調やロシア産ガス輸入の全面停止に直面しつつあるため、アルジェリアからの代替調達を早期に実現したい。一方のアルジェリアも、西サハラ問題をめぐり関係が悪化したスペインに対してガス輸出量を制限しているため(6月時、スペイン市場のシェアはアメリカ・ロシアに次ぐ、第3位(21.6%)に転落)、その余剰分をフランスやイタリアに販売し、資源収入を維持するのが狙いであろう。

 またサヘル情勢では、フランスはマリ暫定政権との関係悪化などにより、約9年半に及ぶマリでの過激派掃討作戦を先月に終了し、マリ駐留部隊を完全撤収させた。その一方、イスラーム過激派の活動は依然活発であり、ロシアの民間軍事会社「ワグネル」がサヘル地域で存在感を増している。こうした状況下、フランスは、アルジェリアがマリ暫定政権と良好な関係を持ち、これまでマリ和平プロセスを主導してきた役割に期待を寄せている。また、ニジェールを拠点とした過激派掃討作戦を効率的に進める上で、フランス航空機を対象としたアルジェリア領空飛行禁止の解除も求めるだろう。アルジェリアとしても、2013年のフランスの軍事介入のように、ワグネルによるマリ進出がアルジェリア南部の不安定化を招く事態は避けたいため、ロシアとは歴史的に友好関係にあるものの、サヘル問題ではフランスと利害を一致させ、連携していくことが予想される。

 

【参考情報】

<イスラーム過激派モニター>【会員限定】

フランスのマリ撤退とワグネル主導の過激派掃討作戦の行方」(2022年8月24日)

 

(研究員 高橋 雅英)

◎本「かわら版」の許可なき複製、転送はご遠慮ください。引用の際は出典を明示して下さい。
◎各種情報、お問い合わせは中東調査会 HP をご覧下さい。URL:https://www.meij.or.jp/

| |


PAGE
TOP