中東かわら版

№31 アルジェリア:スペインとの友好協定及び貿易の停止

 2022年6月8日、アルジェリア大統領府は、2002年に締結されたスペインとの友好・善隣・協力協定(以下、友好協定)の即時停止を発表した。この背景には、スペインが今年3月、西サハラ地域の領有権問題でそれまでの中立的な立場からモロッコ寄りの立場を表明したことを理由に、両国関係が著しく悪化したことがある。また同日、アルジェリアの銀行・金融機関連盟(ABEF)は国内の各行に対し、9日よりスペインとの輸出入に係る銀行取引を停止するよう求めた。

 アルジェリアの発表を受け、スペインのアルバレス外相は翌9日、アルジェリアの決定は遺憾であると述べ、スペインの利益と企業を保護するため、適切かつ断固たる対応を準備している旨を明らかにした。また貿易の停止に関して、リベラ第3副首相兼環境移行・人口問題相は、アルジェリアがガス供給契約の履行義務を遵守すると確信していると述べ、スペイン側はアルジェリアからのガス供給が停止する可能性はないとの見解を示している。

評価

 アルジェリアが固執する西サハラ問題の動向について、今年に入り、スペイン以外にもドイツやオランダが、モロッコ提示の自治構想案を解決策の基盤として評価する旨を表明している。こうした中、アルジェリアがとりわけスペインを敵視している理由は、スペインが旧宗主国として西サハラ問題の解決に向けて歴史的な責任を全うすべきだとの認識を持っているからだ。このため、アルジェリアとしては、今日の領有権問題を作り出したスペインがモロッコ寄りの立場に転じたことは到底受け入れられない。

 今後の注目点は、貿易停止の対象にアルジェリアからスペインへの資源輸出が含まれるかどうか、である。現時点で判明していないが、アルジェリアが西サハラ問題をエネルギー供給の政治的カードとして利用している点を踏まえると、スペインの西サハラ政策を揺さぶるため、現行のガス供給契約を破棄してまで禁輸に踏み切る可能性は否定できない。しかし、アルジェリアにとって、スペイン向け資源輸出額(2019年時)は全体の約12%を占め、イタリアとフランスに次ぐ外貨獲得源であるため、禁輸はアルジェリア財政にも悪影響を及ぼす点は留意すべきだ。一方のスペインは、アルジェリアへのエネルギー依存度を低減させるため、アメリカ産ガスを大量に輸入するほか、カタルやナイジェリアからも追加調達を図っている。このままアルジェリア・スペイン両国が関係改善への妥協点を見出さず、緊張関係を保ち続けば、関係修復はより困難となるだろう。

 

【参考情報】

<中東かわら版>

・「アルジェリア:スペイン向けガス売却価格の引き上げへ」No.7(2022年4月11日)

・「カタル:タミーム首長の欧州歴訪、ウクライナ情勢等を受けたLNG輸出の促進」No.23(2022年5月23日)

 

<中東トピックス>【会員限定】

・「モロッコ:西サハラ問題でスペインと関係改善へ」No.T21-12(2022年3月号)

・「アルジェリア:スペイン向けガス供給の停止を示唆」No.T22-01(2022年4月号)

 

<中東研究>

高橋雅英「アルジェリアの対ロシア・対フランス関係――ウクライナ危機でのエネルギー供給国の役割」『中東研究』第544号、2022年5月。

 

(研究員 高橋 雅英)

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