中東かわら版

№17 UAE:ハリーファ大統領・アブダビ首長の薨去、ムハンマド・アブダビ皇太子による継承

 2022年5月13日、大統領府担当省はハリーファ・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーン大統領(1948年生、73歳)の薨去を発表した。死因は明らかにされていない。同大統領はザーイドUAE初代大統領(1971~2004年)、前アブダビ首長(1966~2004年)の長男として1948年に生まれた。1969年にアブダビ皇太子に任命され、2004年、父ザーイドの薨去に伴ってUAE第2代大統領に就任、アブダビ首長に即位した。2014年に脳卒中を患ってからはほとんどの公務から退き、彼の名義で各種声明は発表されるものの、公の場に姿を現す機会はほぼなくなった。以降、UAE及びアブダビの実質的な政策運営は異母弟であるムハンマド・ビン・ザーイド・アブダビ皇太子(1961年生)が執り行ってきた。薨去を受けて、13日よりUAE国内は40日間の服喪期間に入り、3日間は官民関係機関が業務を停止する(17日に再開)。またハリーファ大統領薨去に伴い、ムハンマド・アブダビ皇太子の大統領就任とアブダビ首長即位が発表された。

 

評価

 2000年代の急激な経済発展、また国内におけるアブダビ首長国の政治・経済的なイニシアチブの確立等、ハリーファ前大統領が現在の国家形成に果たした役割は大きく、内外から彼の功績をたたえる弔意が止まない。一方、彼が脳卒中を患って以降、国内及びアブダビ首長国の実質的な政策運営をムハンマド・ビン・ザーイド皇太子が執り行ってきたことは周知の事実であり、今回の大統領就任及びアブダビ首長即位も既定路線であった。このため、大統領薨去に伴う混乱は見られない。

 注目すべきは、ムハンマド新大統領の後継者、すなわちアブダビ新皇太子(実質的に次のUAE大統領と見てよい)に誰が指名されるかである。有力候補としては、ハーリド・ビン・ムハンマド・ビン・ザーイド王子(1982年生;アブダビ執行評議会メンバー、アブダビ執行局局長、UAE執行委員会会長)、タフヌーン・ビン・ザーイド王子(1972年生;国家安全保障局顧問)、またハッザーア・ビン・ザーイド王子(1965年生、アブダビ執行評議会副議長)等が取りざたされているが、まだ皇位継承の歴史が浅いことから、これについては正式な発表を待たねばならない。

(研究員 高尾 賢一郎)

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